【獣医師監修】老猫(高齢猫)が吐いているときにとるべき対応を解説!

老猫が吐くときの対応

吐き戻しという症状は、下痢とならんで、動物病院を受診する飼い主が訴える、最も多い症状の1つでしょう。吐き戻しの原因には、緊急性の低いものから高いものまでさまざまです。

この記事では、考えられる原因や自宅で観察すべきポイント、注意すべき吐き戻しのサインや動物病院でとられる対応についてお伝えします。
なお「吐き戻し」という言葉には、専門的に「嘔吐」と、食後に食べ物が胃に到着する前にそのまま口から吐き出してしまう「吐出」の2つの症状が含まれます。
ただし、この2つを飼い主が見分けることは困難なため、この記事では「吐き戻し」としてまとめて解説します。

老猫(高齢猫)がよく吐く!急性と慢性にわけた原因

吐き戻しは、急性なのか慢性なのかによって考えられる原因も少し異なります。
この記事では、最初に吐いてから1週間以内のものを「急性」、1週間以上続くものを「慢性」として解説していきます。
急性の吐き戻しは様子をみることもありますが、重い原因が潜んでいたり慢性に移行したりすることもありうるので油断は大敵です。慢性の吐き戻しについては、治療が必要なケースが多いためすぐに動物病院を受診しましょう。

急性の吐き戻しの主な原因

急性の吐き戻しは、治療をしなくても自然に治る場合もしばしばあります。しかし、なかには重症度、緊急度ともに高い場合もあるためすぐに受診することをおすすめします。

原因 解説
食べすぎ、早食い 早食いや勢いよく一度にたくさんの量を食べすぎたりすると、胃に到着する前にそのままフードを吐き出してしまったり、胃の消化が追いつかず、やや消化された状態で吐き戻してしまうことがあります。
胃にたまった毛玉の不快感 頻繁に毛づくろいをする猫は、胃のなかに毛がたまってしまいます。そのため、胃のなかにたまった毛を毛玉として嘔吐するのです。細菌やウイルス、寄生虫の感染、中毒、食事内容が原因で、下痢や嘔吐などの症状が突然起こる一時的な胃腸の炎症です。
食事内容の急な変更 移行期間を設けずに食事内容(フードの種類など)をいきなり変えた場合や、普段あげないおやつを与えた場合などが考えられます。
急性胃腸炎 お腹の風邪ともいえるかもしれません。細菌やウイルス、寄生虫の感染、中毒、食事内容が原因となり、下痢や嘔吐などの症状が突然起こる胃腸の炎症を指します。
消化管の通過障害 異物、腫瘍、消化管の運動機能異常などで、食べたものが消化管内で詰まって通過障害を起こしてしまっている状態です。重症度や緊急性が高い原因の1つです。
急性腎不全 有毒植物の誤食であったり、「尿道閉塞(尿閉)」という尿石や炎症などによって尿道が閉塞してしまい尿を排泄できなくなる状態が続いたりすると引き起こされる病気です。

 

とくに雄猫は尿道が狭く、尿閉を起こしやすい傾向があります。こちらも重症度、緊急性が高い原因の1つです。

慢性の吐き戻しの主な原因

慢性の場合は、治療をせずに自然に治ることはあまりないため、明らかに動物病院の受診が必要です。

原因 解説
慢性腎臓病 高齢猫が痩せる場合に考えられる病気は、慢性腎臓病です。慢性腎臓病のサインとなる症状の1つに「痩せてくる」があります。
腎不全では、尿の濃縮機能がバランスを崩し、薄い色の尿を沢山するようになり、水を沢山飲むよう(多飲多尿)になります。そして、病状が進行すると元気や食欲が低下、嘔吐がみられるようになり、体重も徐々に落ちてしまいます。
年齢の高い猫が頻繁にトイレに行くようになった場合は注意が必要です。
慢性胃腸炎 寄生虫や細菌、ウイルス感染、食物アレルギーや腫瘍などによって引き起こされる、消化管の慢性的な炎症です。
慢性膵炎 膵臓に炎症が起き、膵臓の酵素が漏れ出て、膵臓そのものや周囲の臓器に障害を与えます。症状としては、嘔吐や下痢、脱水症状を起こします。
甲状腺機能亢進症 高齢の猫に多く見られるホルモン疾患です。ノドにある甲状腺という器官から過剰に甲状腺ホルモンが分泌され、嘔吐や下痢、多飲多尿などの症状を引き起こします。

いずれも早期に的確な治療をほどこさなければ、次第に重症化していくことが多い病気ばかりです。なるべく早めに動物病院に相談するようにしましょう。

老猫(高齢猫)が吐いているときに観察するべきポイント!

老猫の吐き戻しの原因

ここでは、主に急性の吐き戻しがみられたときに、観察すべきポイントを解説します。
慢性の吐き戻しの場合は、早急に動物病院を受診することが必要です。
以下のポイントをおさえて、獣医師に情報を伝えられるとよいでしょう。

・元気食欲:吐いた前後での変化はあるか、体重の変化も把握できているとベスト。
・異物や中毒性物質を食べた可能性はないか:無くなっているモノがないか、観葉植物(猫には有毒なものが多い)をかじった痕跡はないか、口の中をのぞくことができればのぞいてみるとよいでしょう。
・1日に吐く回数、頻度
・排泄の状態:尿の回数、量、頻度。便の状態(下痢していないか)
・吐いたもの性状:消化物?未消化物?液体だけ?色や臭いなど。
・吐き方:一度に吐く量、噴出するように吐いていないかどうかなど、吐いているときの腹部の動き。動画を撮れるとベスト。

【老猫(高齢猫)】注意すべき吐き戻しの特徴!

以下のような様子であれば、重い原因が隠れている可能性が高く、動物病院の受診を強くすすめられます。
また、以下に当てはまらなくても、少しでも「なにか心配だな」「なにか違和感があるな」という場合には、ひとまず動物病院に相談しておいたほうが安心でしょう

・元気食欲の低下や消失がみられる
・異物や中毒性物質を摂取した可能性がある
・吐く回数や頻度が多い:ほとんど毎日吐いている、1日に数回吐く場合は早めに動物病院を受診しましょう。
・尿の回数、量に変化がある:とくに一日の尿量が多くなる、あるいは少なくなるのは注意。また、12時間以上排尿がない場合は必ず動物病院に相談をしましょう。
・下痢など他の症状がある
・嘔吐物に血や異物が混じっている
・嘔吐物が緑色など異常な色である
・嘔吐物から便臭や薬剤臭などの異臭がする
・慢性に吐き戻しがある

動物病院でとられる対応

まずは問診と身体検査で、ある程度の重症度、緊急性を判断します。その結果、獣医師が必要と判断すれば検査(主に血液検査、X線検査、超音波検査)を行います。

軽症の可能性が高いようであれば、検査を保留にして対症療法で経過をみることもあります。対症療法には、内服や注射による制吐薬の投与や、点滴(15分程度で終わる皮下点滴という方法をとることが多い)による脱水の改善などが含まれます。

老猫(高齢猫)の吐き戻しに飼い主が出来る予防法

最後に愛猫が高齢の場合に飼い主が出来る、吐き戻しの予防法についてご紹介します。

室内の環境を整える

誤食や誤飲の原因となる異物や中毒性物質を猫の手の届く場所に置かないようにしましょう。
特に、猫にとって有毒となる観葉植物やハーブなどには注意が必要です。

ブラッシングなど毛玉予防を定期的に行う

毛玉を吐く場合には、こまめなブラッシングを行いましょう。それと合わせて、毛玉ケアを行えるフードや、「ラキサトーン」や「ペトロモルト」といった動物用医薬部外品の毛玉除去剤を用いることも有効です。

フードや食事の内容や量・間隔を変更する

フードの粒の大きさが合わない場合や、食事アレルギーがある場合にも吐き戻しの原因となってしまいます。色々なフードを試してみて、愛猫に合ったフードを選択することが大切です。

また、食事と食事の間隔が空きすぎてしまうと、空腹から早食いをしてしまい、吐き戻しの原因となってしまいます。ですので、一度に与える量を減らして、食事の回数を増やしてみましょう。留守中などは、自動給餌器を使うのもおすすめです。

定期的に健康診断を受ける

老猫に吐き戻しの症状がみられた場合には、病気が潜んでいることがあります。定期的に動物病院で健康診断を受け、病気の早期発見・早期治療に努めましょう。

まとめ

老猫の吐き戻し

吐き戻しはよく遭遇する症状なので、様子をみるかどうか迷うこともあるでしょう。様子をみるということも1つの選択肢ですが、油断は大敵です。愛猫の観察を怠らず、気になることや心配なことがあれば動物病院を受診するようにしましょう。

\公式LINE友だち募集中/
友だち追加
本部サイトへの遷移

WITHこの記事を監修した人

西岡優子

西岡優子

【経歴】 北里大学獣医学部獣医学会 卒 砂川犬と猫の病院 勤務医 都内の獣医師専門書籍・雑誌出版社 編集者 吉田動物病院 勤務医 獣医師として就労する傍ら、犬・猫・小動物系ライターとして活動中 【資格・所属】 ●一般社団法人 日本ペット技能検定協会 認定 ドッグライフアドバイザー ●西日本心臓病研修会 心エコー技術トレーニングコース 修了 ●獣医画像診断学会 所属

ABOUTこの記事をかいた人

ふぁみまる編集部

今まで犬を始め、フェレット・ハムスター・カメ・インコなどさまざまなペットを飼育してきました。現在は、ジャックラッセルテリアと雑種の2匹を可愛がっています。趣味は愛犬たちとの旅行です。 このメディアでは、多くの飼い主の方々の不安や疑問・困っていることを一緒に解決していきたいと考えています。