【医師監修】猫の呼吸が早いときなどに考えられる原因と動物病院を受診するときの注意点は?

老猫 呼吸が早い

猫において呼吸が早い、開口呼吸をしているなどの呼吸異常は循環(血液のめぐり)の異常、意識の異常とならんで、獣医療において最も危険かつ緊急性が高い症状の1つです。

受診をためらっている間にどんどん悪化してしまう危険性があるため、決して様子見をせず、可能な限り早く動物病院を受診するようにしましょう。

この記事では、猫の呼吸に異常が見られたときに考えられる原因と対応、また動物病院で行われる主な検査について解説します。

猫の呼吸の異常はとても危険!

呼吸が正常ということは生命維持の根幹の1つです。私たち人間と同じように老猫においても激しい運動後や興奮後に一時的に呼吸が早くなることはありますが、そうでなければ必ず動物病院を受診するようにしましょう。

1つの目安として、覚醒時かつ安静時の呼吸回数が1分間に40回以上、あるいは寝ている時の呼吸回数が25回以上であれば、呼吸数が早いと考えることができます。

呼吸回数の測り方としては老猫が安静時や寝ている時などに胸が上下したらそれを1回の呼吸としてカウントし、10秒間測定して6倍、または15秒間測定して4倍することで、1分間の呼吸数とすることがおすすめでしょう。

また、猫は犬とは違い開口呼吸をすることはほとんどありません。猫が開口呼吸をしていた場合はほぼ異常な状態であるため、注意しましょう。

猫の呼吸が早い場合に考えられる原因

猫の呼吸に異常を引き起こす原因は、ほとんどが緊急性の高い疾患ばかりです。治療の遅れはときに致命的なものとなるため、すぐに動物病院を受診するようにしましょう。

以下に、考えられる原因を挙げます。

病名 解説
猫風邪や猫喘息、慢性気管支炎などの呼吸器疾患 初期症状として猫風邪ではくしゃみや鼻水、猫喘息・慢性気管支炎では頻度の少ない咳がみられます。重症化に伴い、開口呼吸や呼吸数の上昇などが見られるため早めに治療を行うようにしましょう。
心臓病 猫に多いのは肥大型心筋症と呼ばれるもので、二次的には呼吸の異常を引き起こします。
胸水や腹水 腫瘍などのさまざまな原因によって胸腔内や腹腔内に液体(水であったり血液であったり)が貯留している状態です。肺や横隔膜の動きが制限され、呼吸がしづらくなります。
熱中症 特に夏に注意が必要となります。しかし、エキゾチックショートヘアーなどの短頭種やヒマラヤンなどの長毛種は自分で体温を下げる能力が低いため、夏場以外でも激しい運動・興奮によって熱中症が起こりうるので注意が必要です。

呼吸が異常に早いときにとるべき対応

老猫の呼吸

猫の呼吸数が異常に早かったり開口呼吸をしていたりすることに気づいてから、動物病院を受診するまでに自宅でとるべき対応について紹介します。

猫の興奮や運動を避けながらキャリーに入れる

動物病院を受診する際は、猫をキャリーに入れる必要がありますが、キャリーを嫌がる猫は多いでしょう。ただでさえ呼吸がしづらい状況にいる猫を、興奮させたり暴れさせたりしてしまうとさらに症状を悪化させ、場合によっては命を落とす可能性もあります。

キャリーが嫌いな猫は、普段猫が寝るときに使っている毛布やタオルで背中側から全身を一気に包み優しく声をかけながら、素早くキャリーに入れてあげるなどの工夫をするとよいかもしれません。また、どうしても通院が難しい場合は往診を検討してみても良いでしょう。

周囲の温度環境などが適切かどうか確認するとともに応急処置を行う

明らかに部屋の温度が高いときや陽のあたる場所などで、猫の呼吸に異常が見られた場合は熱中症の危険性があります。熱中症の場合も受診が必要となりますが、猫に意識がある場合は事前に応急処置を行うことで動物病院での治療による回復がスムーズになるかもしれません。

応急処置として猫の意識がある場合は、猫がいる場所を涼しくするか、涼しい場所に移動させてあげましょう。ただ、冷房で冷やしすぎると状態を悪化させてしまう可能性もあるため、注意する必要があります。

また、水で濡らして軽く絞ったタオルを猫の首のまわりや脇の下、内股の付け根などの太い血管が通っているところを覆うようにかけてあげることもおすすめです。

猫の体勢を変えないように注意する

呼吸がしづらい猫は、自然と呼吸が少しでも楽になるような体勢をとるようにしています。そこで猫の体勢を無理に変えると急激に悪化する可能性もあるため、猫が自分で選んでいる体勢はなるべく変えないように注意しましょう。

もし、いつも使用しているキャリーケースなどにそのままの体勢では入れることができない場合は無理に入れようとせずに、空気穴などを空けた上でダンボールを利用しても良いかもしれません。

動物病院で行われる主な検査

検査名 検査内容
身体検査 聴診器によって呼吸状態や心臓の状態などの確認を行います。
血液検査 スクリーニングとして多くの項目の数値を確認します。
X線検査 胸部、腹部のX線検査で気管や肺、心臓、胸腔・腹腔内の貯留腋がないかなどを評価します。

的確な初期治療をするために、幅広い検査が必要とされます。
ただし、猫の状態によっては検査のストレスがきっかけとなり、急激に悪化することもありえます。検査することさえ危険であると獣医師が判断した場合には、検査実施を保留にして、高濃度の酸素をかがせ、状態をひとまず安定させることに専念することもあります。

まとめ

老猫の呼吸 病院

呼吸が異常に早いという症状は、とにかく緊急かつ危険な症状です。初期治療の遅れは救命率を下げることに直結しますので、くれぐれも自己判断で様子見はしないようにしましょう。
覚醒時かつ安静時の呼吸回数が1分間に40回以上、あるいは睡眠時の呼吸回数が25回以上であれば明らかな異常と判断できます。
また、猫は開口呼吸をほとんどしません。開口呼吸をしているようであれば、ほぼ異常といえます。今の呼吸が「異常に早い」にあたるのか判断に迷うようであれば、参考にしてみてください。
動物病院に連れて行く際にも、猫に極力ストレスをかけないよう注意しながら受診するようにしましょう。

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WITHこの記事を監修した人

松本 千聖

松本 千聖

岐阜大学応用生物科学部獣医学課程を卒業後、3年ほど獣医師として動物愛護団体付属動物病院やペットショップ付属動物病院にて主に一次診療業務、ペット保険会社では保険金査定業務などに従事しました。現在は製薬関係の業務に携わり、プライベートでは個人で保護猫活動並びに保護猫達の健康管理を行っています。

ABOUTこの記事をかいた人

ふぁみまる編集部

今まで犬を始め、フェレット・ハムスター・カメ・インコなどさまざまなペットを飼育してきました。現在は、ジャックラッセルテリアと雑種の2匹を可愛がっています。趣味は愛犬たちとの旅行です。 このメディアでは、多くの飼い主の方々の不安や疑問・困っていることを一緒に解決していきたいと考えています。