【獣医師監修】老猫(高齢猫)が痩せる!考えられる原因ととるべき対応とは

老猫が痩せる

老猫が痩せてくると、飼い主は心配になりますよね。しかし、一方で「歳だから仕方ない」と考えがちです。痩せる原因としては、高齢に伴う食欲の減退のほかに、慢性腎臓病や悪性腫瘍、甲状腺機能亢進症、また口内炎など口腔疾患などの病気があります。

飼い主は老猫の食事量や体重、排泄物、様子を日頃からチェックしましょう。また、気になることがあれば、早めに動物病院を受診することも大切です。
この記事では、老猫が痩せる原因をそれぞれ解説するとともに、対応方法についても紹介します。

老猫(高齢猫)が痩せる!病気以外に考えられる原因

老猫が病気以外で痩せた場合に考えられる原因としては、以下のような点が考えられます。

高齢に伴う食欲の減退

老猫が痩せる原因

猫は年をとってくると、だんだんと寝て過ごす時間が長くなりがちです。また、以前より運動能力が低下し、キャットタワーに上ろうとしない、遊ぼうとしないなど活動量がどうしても減っていきます。

活発に運動すれば、その分エネルギーが消費されますが、食事量が減り痩せてしまいます。
また、嗅覚の衰えや味覚の変化から食事への興味を失っている、フードボウルが床にあって下を向く食事姿勢をとるのがつらい場合なども、痩せる原因になると考えられます。

加齢による筋肉の衰え

年を重ねると生理的な変化として、徐々に活動性が低下し、筋肉量が減少します。また、体内の水分量も徐々に減少していき、若い頃に比べて体重が減り、痩せていくのです。

からだの節々の痛みなどからくるストレス

加齢に伴うからだの節々の痛みなど慢性的で不快なストレスがあると、そのストレス負担になると胃腸の動きに影響し、嘔吐や下痢、食欲不振などを招き、痩せてしまうのです。

老猫(高齢猫)が痩せる原因となる病気

口内炎など口腔疾患

高齢になると生じやすいのが、口内炎や歯肉炎などの口腔内のトラブルです。口の中に痛みや不快感があると、食べることが困難になるため、食欲の低下が見られます。

甲状腺機能亢進症

たくさん食べているのにも関わらず、痩せてくる場合は甲状腺機能亢進症が考えられます。甲状腺機能亢進症は、甲状腺ホルモンが過剰に分泌される病気です。この病気になると、代謝が活発になり、普通かそれ以上に食べるのに痩せていきます。

また、食欲が増して水もよく飲み、そしてよく動くようになる等の症状も特徴です。一見、元気で食欲があり見過ごされやすい病気のため注意しましょう。

慢性腎臓病

老猫によくみられる病気が慢性腎臓病です。慢性腎臓病のサインとなる症状の1つに「痩せてくる」があります。腎不全では、尿の濃縮機能がうまく出来なくなり、大量に薄い色の尿をするようになり、水も沢山飲むよう(多飲多尿)になります。

そして、症状が進行すると元気減退や食欲低下、嘔吐がみられるようになり、体重も徐々に落ちてきます。高齢の猫が水を沢山飲んだり、頻繁にトイレに行くようになった場合には注意が必要です。

糖尿病

膵臓から分泌されるインスリンという血糖値を下げるホルモンの不足、あるいは、インスリンはきちんと分泌されているが体がうまく利用できない状態になる病気です。そのため、血糖値が上昇することで、さまざまな症状があらわれます。

肥満の猫で発生しやすい傾向があり、病態が進行すると糖尿病も徐々に痩せていく病気です。とくに、肥満の猫は注意するようにしましょう。

悪性腫瘍

悪性腫瘍、つまり癌も老猫が痩せる原因となる病気の一つと考えられます。腫瘍ができた部位や進行状況、転移の有無などで症状は異なるものの、「痩せる」はよくみられる症状です。

老猫(高齢猫)が痩せるときに飼い主がすべきこと

老猫が痩せてきたら病気が潜んでいる可能性があるため、まず動物病院で診察を受けることが重要ですが、普段から飼い主がやっておくべきこともあります。診察の手助けにもなるので、毎日実践することをおすすめします。

日頃から体重をチェックする

痩せ具合を判断する場合、見た目はもちろんですが、日頃から体重を測って数字をチェックすることも大切です。

速やかに動物病院を受診し、的確に状況を伝えるためには、日ごろの状態をチェックしておくことが大切です。

食欲の有無を確認する

日頃から食欲の有無を確認するようにしましょう。なんとなく…ではなくきちんと量を測ることが大切です。ドライフードはカップできちんと測って与えるとよいでしょう。ウエットはグラム数を測定しておきましょう。

また、残したフードがあった場合は量を差し引いてください。ウエットの場合は水分が蒸発するので、その分も考慮しておきましょう。

老猫の体調や様子をチェックする

愛猫の排尿や排便などの体調チェックも欠かさずに行いましょう。主に以下のことを確認します。

・元気があるかどうか。隅っこや暗いところでうずくまっているときは体調不良の可能性が高いので、要注意です。
・口を痛そうにしていないかどうか。よだれが出ていると、口の中になんらかのトラブルがある可能性が高いです。口の周囲や、ベッドがよだれで濡れていないかも確認しましょう。
・尿や便の状態はどうか。尿量がやたらと多い、尿や便に血が混ざる、排尿時に痛がって鳴く、下痢をしている、便が全然出ていない、などを確認しましょう。
・吐いているかどうか。猫は特に問題がなくても吐くことがありますが、1日に何度も吐く、毎日のように吐くという場合は注意が必要です。
・からだにデキモノがないかどうか。そっとマッサージしてチェックしましょう。

早めに動物病院を受診する

愛猫に気になる変化があれば、すぐに動物病院を受診することをおすすめします。その際は、体調チェックした結果を持って行くとよいでしょう。

とくに、以下のような場合は治療が必要になる可能性が高いため、早急に動物病院を受診しましょう。

  • ・ぐったりしている
  • ・全然食事をしない
  • ・下痢や嘔吐が止まらない
  • ・尿が出ない

高齢に伴う食欲の減退対応方法

病気が見つからなかった場合は、食事をしっかりととることで状況が大きく改善できるため、食欲を増すように工夫をして食べさせてあげましょう。

キャットフードをシニア用に切り替える

フードの量が少なかったり、からだに必要な栄養素やカロリーの摂取が不十分だったりすると痩せてきます。
成長や加齢に伴って、からだの求める栄養バランスやカロリー量、消化吸収能力も変化するため、年齢や体重に合わせてフードをシニア用に切り替えて適正量を与えるようにしましょう。

少し温めて香りを立てる

老猫になると、どうしても嗅覚が衰えがちです。フードを少し温めると香りが立つので、それだけで食欲を取り戻すことがあります。
ただし、アツアツはやけどをしてしまう可能性があるので、ほんのり温かい程度にしましょう。

小分けにして食べさせる

猫はもともと1日数回、小動物を狩っては食べるという生活をしていました。そのため、少しずつ食事を摂るほうが猫にとっては自然です。一気に食べさせるのではなく、フードボウルに少しずつ入れて食べさせてみましょう。

手から与えると食べる子もいる

からだを起こして食べたり、かがめて食べたりするのがつらい老猫もいます。フードボウルを高くしてもうまく食べない場合は、手から与えることでよく食べる子もいるので試してみてください。

うまく噛むことができない老猫や寝たきりの老猫には、大きな注射器のような容器「シリンジ」で口の中に流動食を入れます。勢いよく入れるとむせてしまうので、獣医師に正しい方法を教えてもらってから行いましょう。

関連記事:猫の流動食の選び方とは?作り方や与え方、強制給餌まで解説

鶏肉のゆで汁などを加える

いつものフードに鶏の胸肉や白身の魚のゆで汁を加えると、よく食べることがあります。
歯が悪い子もフードがふやけて食べやすく、水分補給にもなるのでおすすめです。療法食を食べている老猫は、与える前に獣医師に相談するようにしましょう。

まとめ:老猫が痩せたら動物病院へ

老猫が痩せる原因を探る

老猫が痩せるには必ず原因があります。「年をとったから仕方ない」と思わず、動物病院を受診して原因を探りましょう。体重や食事量、排泄物、口の中の様子など体調のチェックも大切です

痩せた原因が病気ではない場合は、食べさせる工夫をしてあげましょう。ほんの少し温める、手から与えてみる、鶏肉のゆで汁などを加えるなどがおすすめです。
大切な老猫の健康を守るためにも、飼い主ができることはやってあげましょう。

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WITHこの記事を監修した人

西岡優子

西岡優子

【経歴】 北里大学獣医学部獣医学会 卒 砂川犬と猫の病院 勤務医 都内の獣医師専門書籍・雑誌出版社 編集者 吉田動物病院 勤務医 獣医師として就労する傍ら、犬・猫・小動物系ライターとして活動中 【資格・所属】 ●一般社団法人 日本ペット技能検定協会 認定 ドッグライフアドバイザー ●西日本心臓病研修会 心エコー技術トレーニングコース 修了 ●獣医画像診断学会 所属

ABOUTこの記事をかいた人

ふぁみまる編集部

今まで犬を始め、フェレット・ハムスター・カメ・インコなどさまざまなペットを飼育してきました。現在は、ジャックラッセルテリアと雑種の2匹を可愛がっています。趣味は愛犬たちとの旅行です。 このメディアでは、多くの飼い主の方々の不安や疑問・困っていることを一緒に解決していきたいと考えています。