【獣医師監修】老犬の尿漏れが気になる!原因になる病気と治療法を解説

獣医師と犬

「年齢を重ねた愛犬が最近、尿を漏らすようになった」「いつもと違う場所に尿をした痕跡がある」こんな状況になると、何かの病気じゃないかと不安になる方も多いでしょう。

そこでこの記事では、愛犬の尿漏れに気づいたときに参考にできるよう、主な原因と治療について解説します。また、後半では動物病院に相談する前に注目しておきたいポイントについても解説していますので、参考にしてみてください。

犬の尿漏れ、原因は?

犬が尿を漏らすことが多くなるのはなぜでしょうか?代表的な尿漏れの原因を紹介します。

膀胱炎

膀胱炎は膀胱内に細菌が感染し、膀胱内で炎症が起こることが原因になります。
そのため、膀胱粘膜が肥厚し、残尿感が起こります。そのため、何度もトイレでしゃがむような動作をします。まとめて大量に漏れるというよりは、少ない量を頻回に排尿するのが特徴です。

腎不全

腎不全が起こると次第に尿の濃縮機能が衰え、水に近いような尿になります。そのため、腎不全の初期では大量の尿を頻回するようになります。尿の量が多いため、間に合わず漏らしたりするようになります。

前立腺肥大

前立腺肥大は去勢手術を受けていない老犬に多い病気です。
前立腺は膀胱の付け根あたりに尿道を取り巻くように存在します。前立腺肥大が起こると、そばにある直腸を圧迫します。そのため、尿の切れが悪くなります。

ホルモン性

ホルモン性の尿漏れの原因は、女性ホルモン性や副腎皮質機能亢進症などがありますが、後半で詳細に説明します。

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尿漏れの原因となる腎不全

シリンジで餌をもらう犬

腎不全の初期症状として多くみられるのが、「薄いおしっこをたくさんするようになる」というものです。厳密な意味での「尿漏れ(本人の意識外での排尿)」とは違いますが、尿量が増えるために、犬が普段と違う場所で尿をし始めることがあり、それを見た家族が「お漏らしをした」として認識することが多くなっています。

腎不全の特徴

いわゆる慢性腎不全は腫瘍、心臓病に次いで犬の死因第三位というデータがあるほど、老犬は気をつけなければいけない病気です。

腎臓は尿を濃縮する機能を持っているのですが、その機能が低下することで、尿は薄く透明に近づいていき、一回ごとの量も増えていきます。犬が普段とは違う場所で尿をするようになったときには、排尿姿勢をとった上で排尿しているかどうかよく観察してください。しっかり排尿姿勢をとっているのであれば、尿量が増えてしまい、トイレまで間に合わなくなっているのかもしれません。

腎不全の治療

腎不全の治療は、進行ステージ毎に異なりますが、基本的には食事療法、通院点滴、内服薬の3本立てで行われます。

腎臓に負担をかけないよう、リンなどの栄養素を制限した療法食に切り替え、点滴を定期的に行うことで脱水を防ぎ、腎不全の進行を遅らせるというもの。内服薬は尿たんぱくが陽性であったり、血圧が高かったりする場合などに使われます。

もし腎不全と診断された場合には、担当獣医師とどう治療していくのかよく相談しましょう。

副腎皮質機能亢進症でも尿漏れが!

副腎皮質機能亢進症は、別名をクッシング症候群とも呼ばれ、この病気を発症したほとんどの犬は飲水量および尿量が増えます。腎不全と同様に、厳密な意味での「尿漏れ」とは違いますが、家族からするとお漏らしするようになったと感じられることの多い病気です。

副腎皮質機能亢進症の特徴

副腎という臓器は、尿量に影響を与えるホルモンを分泌しています。その働きが何らかの原因で異常をきたし、過剰なホルモンが分泌されるようになってしまう病気が、副腎皮質機能亢進症です。最も特徴的な症状は、ご紹介の通り、飲水量および尿量の増加ですが、他に脱毛、皮膚・筋肉の萎縮などの症状も多くみられます。

副腎皮質機能亢進症の治療

治療は主に、副腎の働きを抑える内服薬の投与によって行われます。注意したいのは、治療の目的が病気を治すことではなく症状を抑えることにある点です。

この病気は完治させることはできないため、投薬を途中でやめることはできず、生涯にわたる治療が必要とされます。

雌の尿漏れ

雌(メス)で尿漏れを起こしている場合に多いのは、ホルモン反応性尿失禁と呼ばれるものです。特に、避妊手術を終えている老犬に多く起こります。

特徴は睡眠中など、本人の意識がないときに尿をダラダラと漏らしてしまう一方で、覚醒時には全く問題ないことが多い点です。老化に伴って起こる、いわゆる女性ホルモンの分泌不足によって、尿道括約筋の働きが低下し、症状があらわれてきます。

治療はホルモン剤の投与ですが、重い副作用のリスクもあるのが現状です。尿で濡れることによる皮膚炎などに気をつけながら、オムツなどで対応できるようであれば、本人のからだに大きな害はないため治療をしないということも多くなっています。病気というよりは、老化に伴う生理的な現象とも捉えられるといいでしょう。

ただし、雄(オス)でみられることはほぼありません。雄で尿漏れが見られた場合には、明らかに異常といえるでしょう。

尿漏れがあったときの対処法

おむつをするミニチュアダックス

原則として、排尿に異常が見られたときには、まず動物病院に相談しましょう。これまでにご紹介してきた以外にも尿漏れの原因は多くあり、自宅での観察だけで見分けるのは不可能です。

ここでは、動物病院を受診した際に、問診でよく聞かれることについて見ていきましょう。

まずは、本人の意識外での排尿なのかどうかを見極めましょう。普段とは違う場所、例えばベッドなどに尿をしていたとしても、本人が排尿姿勢をとっていたのであれば、意識外の排尿とは呼べません。

それと同時に、尿の一日の回数や一回ごとの量、一日の飲水量も記録して獣医師に提出できるとよいでしょう。加えて、排尿に異常があったときには、尿検査を行うことが非常に多くなっています。受診の際に、なるべく新鮮な尿を持参すると、診断がよりスムーズに進むといえます。

まとめ:尿漏れには原因がある!

「尿漏れがある」といって動物病院を受診した老犬に多い原因が、雌のホルモン反応性尿失禁、腎不全、副腎皮質機能亢進症です。ただし、この3つ以外にも、原因は多くあります。

これらを、自宅での観察のみで判断することは不可能です。尿漏れがあると感じられた際には、ためらわずに動物病院で、専門家である獣医師に相談してください。

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WITHこの記事を監修した人

平松 育子

平松 育子

山口大学農学部獣医学科(現:山口大学共同獣医学部)卒業 山口県内の複数の動物病院で代診を務めたのち、2006年有限会社ふくふく動物病院を開業。2023年ふくふく動物病院を事業譲渡したのち、大手動物病院で院長を務める。 ペット系記事のウエブライターを10年経験し、2023年にペットの記事を執筆・監修する会社「アイビー・ペットライティング」を立ち上げ代表を務める。

ABOUTこの記事をかいた人

ふぁみまる編集部

今まで犬を始め、フェレット・ハムスター・カメ・インコなどさまざまなペットを飼育してきました。現在は、ジャックラッセルテリアと雑種の2匹を可愛がっています。趣味は愛犬たちとの旅行です。 このメディアでは、多くの飼い主の方々の不安や疑問・困っていることを一緒に解決していきたいと考えています。