【獣医師監修】老猫が血を吐いた時に考えられる原因と対応について解説!

老猫が突然、口から血を吐いたら…。吐いた血の量に関係なく、猫が血を吐いてしまったことに飼い主がパニックになってしまいますね。

焦ってしまいますが、できるだけ冷静に対応するために、口から血を吐く原因、血を吐いてしまった時に何に注意すればよいのかなどについて解説します。

老猫が吐血する主な原因は 4つ!

老猫が口から血をだす主な原因は3つあります。いずれの原因であったにしても、放置していて治ることは期待できません。なかには命に関わる状態であることもあります。症状があった時点で、なるべくはやく動物病院に連れていくことをおすすめします。ここに紹介している情報をもとに、獣医師に詳しい様子を伝えられると理想的ですね。

1. 胃腸からの出血

胃潰瘍や重い腸炎、消化管異物、ストレスなどによって、消化管内出血が起こると、血液が逆流し、口から吐き出されることがあります。これが厳密な定義での「吐血」にあたります。血を吐く際に、グッと腹部が持ち上がるような嘔吐特有の動作を伴うことが多いのが特徴です。血液が消化液の影響を受けて、赤褐色に変色していることもあります。このように消化管から出血が起こる場合を「吐血」といいます。

背景に重い胃腸の異常がありますので、嘔吐や下痢などの消化器症状を伴う場合も多くあります。血を吐くときの動作や、他の症状などを観察できていると動物病院での診療がスムーズに進むでしょう。

2. 口腔内からの出血

歯周病、口腔内腫瘍などで口腔内に流出した血液を吐き出すことがあります。この場合は嘔吐特有の動作は伴わないままに、鮮血を吐き出します。人間で言えば、唾を吐くようなイメージでしょうか。ただ単に口の端などからタラーっと垂れるだけのこともあります。

口腔内環境は、大人しい猫であれば飼い主が目で見てわかる部分です。無理をしない範囲で、口の中をのぞいてみるといいかもしれません。

3. 気道・肺など呼吸器からの出血

今回紹介する原因の中で最も緊急性が高く、放置すれば呼吸困難により命を落とす可能性が高いのが呼吸器からの出血です。特に肺に出血があった場合には、一刻も早く治療を開始しなければなりません。

呼吸器に異常がある場合は、多くのケースで呼吸数が上昇します。1分間の呼吸数が40回を超えているようなら明らかな異常です。また呼吸回数が増えていなくても、深い腹式呼吸をしていたり、口を開けて呼吸したりしているのも異常です。可能な限り早く動物病院へ連れて行きましょう.

動物病院に連れて行くときは、猫の姿勢に注意を払いましょう。最も呼吸が楽な姿勢(多くはうつ伏せ、あるいは横向き)を自分でとっていることが多いので、無理に姿勢を変えさせることがないようにしましょう。特に仰向けにしてしまうと呼吸状態が急激に悪化することも多くあります。なるべく体を動かさないようにしながら連れ出しましょう。

4. 心疾患が原因になることも

血を吐く場合、心疾患が原因になることもあります。心疾患にも様々な病気がありますが、猫で多いのは僧帽弁閉鎖不全症(そうぼうべんへいさふぜんしょう)、肥大型心筋症です。症状が進行すると肺水腫が起こり、呼吸数の増加、呼吸困難が起こり咳とともに薄く血を吐くことがあります。このように、呼吸器系から血を吐く場合は喀血(かっけつ)と言います。

老猫が吐血したときの対応!

老猫に限らずですが、猫が血を吐いた場合はなるべく早く動物病院に連れていくべきといえます。放置して良くなるケースはほとんどないばかりか、様子を見ている間に急激に悪化して命を落とすケースも少なくありません。

まずは少しの間だけよく観察をして、緊急性の判断や、獣医師に伝えるべき情報の収集をするようにしましょう。血を吐いた後倒れている、呼吸がいつもと違う、意識がない、血が止まらないなど、緊急性が高そうなときは一刻も早く動物病院に連れて行きましょう。緊急性が高そうに見えなくても、数日以内には動物病院を受診するのが無難です。

老猫が血を吐いた!まず観察すべきポイント!

猫が血を吐いたときに観察すべきポイントを紹介します。主に観察すべきポイントは大きく4つにわけられます。

全身状態

元気食欲の有無や、呼吸の状態などの全身状態を観察しましょう。安静時の呼吸回数が40回/分を超えている場合や、呼吸が苦しそう、食欲もなくグッタリしているなどの場合は緊急性が高いといえます。

可能な限り早く動物病院へ連れて行くべきです。その時に猫の姿勢はなるべく変えないようにしましょう。

消化器症状の有無

嘔吐、下痢などの消化器症状がないか、あるいはなかったか観察しましょう。消化器症状を伴っている場合は、胃腸での出血が疑われます。特に注意が必要なのは、「メレナ」と呼ばれる真っ黒なタール状の下痢です。

メレナは、消化管内で大量の出血が起きているサインです。なるべく早めに動物病院に連れて行ってあげましょう。

尿の状態

胃腸での出血の背景に、腎機能の低下が関わっている可能性もあります。腎臓の異常は、尿の異常となって表れます。水を飲む量、尿の量が急激に増えていないか、逆に尿が全く出ていないという症状はないか情報を集めましょう。

特に尿が24時間以上出ていない場合は緊急性が高いため、直ぐにでも動物病院に連れて行くべきです。

呼吸器の状態

高齢の猫になると心臓が悪くなる場合があり、前述した僧帽弁閉鎖不全症や肥大型心筋症が代表的な病気です。心臓は全身に血液を送り出す臓器ですが、肺と血管でつながっており心臓の状態は肺にも影響を与えます。

心疾患が原因で血液の流れが悪くなると、肺の毛細血管から血液の液体成分が肺胞内に滲み出し、やがて肺胞内に液体がたまってしまう肺水腫という状態を引き起こすことがあります。肺水腫になると呼吸困難やピンク色から赤色の鼻汁が出たり、せき込んだ拍子に血を吐いたりすることがあります。一刻も早く動物病院で適切な治療を受けないと命にかかわります。

口腔内の状態

歯肉からの出血や、口腔内に出来物がないかの確認をできると理想的です。左右の犬歯のうしろのスペースに指を入れると、猫のほうから口を開けてくれます。ただし口まわりを触られるのを嫌う猫は多く、全身状態が悪い猫にストレスをかけると急激に悪化するリスクもあります。あまりに嫌がるようであれば無理はしないようにしましょう。

まとめ

老猫が血を吐くのは見過ごせない異常のサインです。自宅で様子をみるメリットはほぼなく、デメリットは非常に大きいといえます。迅速に愛猫の自宅での様子に関する情報を収集して、可能な限り早く動物病院へ連れて行けるとよいですね。

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WITHこの記事を監修した人

平松 育子

平松 育子

山口大学農学部獣医学科(現:山口大学共同獣医学部)卒業 山口県内の複数の動物病院で代診を務めたのち、2006年有限会社ふくふく動物病院を開業。2023年ふくふく動物病院を事業譲渡したのち、大手動物病院で院長を務める。 ペット系記事のウエブライターを10年経験し、2023年にペットの記事を執筆・監修する会社「アイビー・ペットライティング」を立ち上げ代表を務める。

ABOUTこの記事をかいた人

ふぁみまる編集部

今まで犬を始め、フェレット・ハムスター・カメ・インコなどさまざまなペットを飼育してきました。現在は、ジャックラッセルテリアと雑種の2匹を可愛がっています。趣味は愛犬たちとの旅行です。 このメディアでは、多くの飼い主の方々の不安や疑問・困っていることを一緒に解決していきたいと考えています。