【獣医師監修】老犬が急に立てなくなったのはなぜ?原因と対処法を解説!

「昨日までは全くいつもどおり、元気そのものだったのに…今朝起きたら急に立てなくなっている!」老犬と暮らしていれば、いつ起きてもおかしくない状況です。この記事では、老犬が急に立てなくなったときの代表的な原因やとるべき対応について解説しています。

代表的な原因は4つ!

「自分で立てなくなる」という状態はさまざまな原因によって引き起こされます。単純に手足の自由が効かなくなって立てなくなっていたり、手足の自由は効くけれども、全身の状態が著しく悪化していて体力が落ちて立てなくなっていたりすることも。次に紹介する中で、上2つは前者、残りは後者です。

怪我

骨折や脱臼、靭帯の損傷などが考えられます。この場合、4本の足全てが同時に発症することはまれですが、強い痛みによって立つこと自体を嫌がるために、ヒトの目には「立てなくなった」と映ることが多いです。

神経の病気

てんかん、椎間板ヘルニアなどの神経の病気が原因の場合は、いわゆる「麻痺」の状態が生じることによって立てなくなります。てんかんで立てなくなっている場合には、痙攣発作などを伴うことも多いでしょう。

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心臓の病気

僧帽弁閉鎖不全症などが代表的です。心臓病の末期になると、からだに血液を送り出すポンプの機能が失われてしまい、チアノーゼが起こったり、症状が重くなると心発作を起こして倒れてしまうことがあります。

稀に血栓が飛んでしまい、血管に詰まり血流が途絶えてしまう場合があります。この状態は血栓塞栓症と言い、血流が途絶えてしまうと感覚がなくなり立つことが困難になります。

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呼吸器の病気

肺炎、肺水腫などが多く見られ、肺水腫は心臓病を背景にして生じることもあります。これらの病気が重症化した場合には、肺で酸素を血液に取り込むことができなくなり、全身の機能が低下してしまいます。安静時でも呼吸が荒い場合には、まず呼吸器の異常を疑いましょう。

その他、全身状態の急な悪化として、低血糖、敗血症、薬物や毒物の誤食、内臓腫瘍からの大量出血なども考えられます。

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犬が急に立てなくなるのは緊急事態!

犬と女性

犬も含めた動物は、自分の体調不良を隠そうとすることがほとんどです。その中でも「立てない」ということを隠しきれないときには、重い体調不良であることが多く、命に関わる状態であることも少なくありません。

加齢による筋肉量の低下で立てなくなることも確かにあります。しかし加齢だけが原因であれば「徐々に」立てなくなっていくはずです。「急に」立てなくなった場合は、すぐにでも動物病院へ連れて行くことをおすすめします。緊急性が高いことも多いため、かかりつけ医が休みだったとしても、他の病院に連れていくことを検討しましょう。

病院に連れて行く前にここをチェック!

病院に連れていく前にまずは自宅でチェックしておくべきポイントです。「立てない」という症状の場合、病院に着いたあとに獣医師がゆっくり問診をとる余裕もなく緊急治療を始めないといけないこともあります。

  • 意識状態:はっきりしているのか、ぼーっとしているのか、全くないのか
  • 呼吸状態:荒くなっていないか。安静時の呼吸数が40回/分以上は明らかに異常。
  • 舌の色が紫色っぽくなっていないかを確認
  • 誤食の痕跡がないか:特にヒトの睡眠剤や抗うつ剤、解熱鎮痛剤などは注意
  • 糖尿病管理中の犬に限り、インスリンの過剰投与がなかったか
  • 足の感覚の有無を確認

以上のポイントを紙に書き出すなどして整理しておけるとベストです。獣医師に短時間でわかりやすく伝える助けになりますし、すぐにでも緊急治療を始めないといけなくなったとしてもメモをそのまま渡して読んでもらうことができます。

病院で行われる主な検査

犬が、特に老犬が急に立てなくなった場合は原則、全身精査が望まれます。病院で行われることが多い主な検査と、費用の目安を解説します。ただし費用は動物病院ごとに幅が大きい部分でもあるので、正確なところは受診先の病院に確認してみてください。

問診、身体検査

動物病院に着いて最初に行う検査で、各種検査の優先順位を決めるために行われます。この時点で大まかな緊急度、重症度の目安もつけます。呼吸の明らかな異常やてんかん発作など、検査でストレスをかけると急変する可能性が高かったり緊急治療が必要だったりした場合にはこの後に行うべき検査を保留にして、まずは状態を落ち着けることに専念することもあります。

血液検査

立てなくなる原因はさまざまであり、検査にかかるストレスや見逃すリスクを最小限におさえるためにも、一度に幅広い項目を調べることが多いでしょう。病院や測定する項目にもよりますが1万円〜2万円が目安です。

画像検査

レントゲン検査や超音波検査などが画像検査と呼ばれます。それぞれ一長一短であり、2種類の検査を同時に行うこともあります。体重別に価格を設定している病院も多いですが、小型犬であればレントゲン検査と超音波検査あわせて2万円程度が目安です。可能であれば、MRI検査やCT検査を行うとより正確に診断できます。

まとめ

犬に限らず動物が自分で立てなくなるというのは、命に関わる状況である可能性が高いといえます。様子をみていたら手遅れになってしまって、後悔を抱えてしまうケースも少なくありません。なるべく早く動物病院に連れて行ってあげることをおすすめします。その際には獣医師に伝えたいことを、この記事で紹介したようなポイントを踏まえて紙に書き出しておけると理想的ですね。ぜひ参考にしてみてください。

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WITHこの記事を監修した人

平松 育子

平松 育子

山口大学農学部獣医学科(現:山口大学共同獣医学部)卒業 山口県内の複数の動物病院で代診を務めたのち、2006年有限会社ふくふく動物病院を開業。2023年ふくふく動物病院を事業譲渡したのち、大手動物病院で院長を務める。 ペット系記事のウエブライターを10年経験し、2023年にペットの記事を執筆・監修する会社「アイビー・ペットライティング」を立ち上げ代表を務める。

ABOUTこの記事をかいた人

ふぁみまる編集部

今まで犬を始め、フェレット・ハムスター・カメ・インコなどさまざまなペットを飼育してきました。現在は、ジャックラッセルテリアと雑種の2匹を可愛がっています。趣味は愛犬たちとの旅行です。 このメディアでは、多くの飼い主の方々の不安や疑問・困っていることを一緒に解決していきたいと考えています。