年齢を重ねると、若い頃と比べて水を飲む量が減る犬が増えてきます。水を飲む量が不足すると、脱水状態となり腎臓をはじめとして、からだの様々なところに負担がかかります。また、水を飲まないという症状自体に病気が隠れている可能性もあります。
この記事では、老犬が水を飲まなくなり戸惑っている飼い主にむけて、代表的な原因と対処法を解説します。
目次
老犬が水を飲まないときの主な原因
老犬が水を飲まなくなる原因については、病気や老衰など、さまざま原因が考えられます。そのうち代表的なものを5つ紹介します。
食欲不振
食欲不振の代表的な原因の1つである胃腸炎があるときには、いわゆる「気持ち悪い」「胸やけがする」といった感覚が犬にも生じていると考えられ、それによって水を飲みたがらなくなることもあります。
特に嘔吐を伴う場合に多くみられます。嘔吐を伴う食欲不振では、急性膵炎など命に関わる病気が関わっている可能性もあるため、注意が必要です。
飲みたくても飲めない
犬には水を飲みたいという意欲があるにも関わらず、何らかの原因で水を飲めない状態です。いわゆる歯周病が重度の犬では、顎関節までもが変形してアゴが開きづらくなることがあります。そのほか、舌の腫瘍や神経の異常などで舌の動きが失われている場合にみられます。
水飲み場まで行きづらい
関節が痛かったり、筋力が衰えていたりすると水飲み場まで動くのを嫌って、結果的に水を飲む量が減ることがあります。同居犬がおり水飲み場の数が少ないときなどには、同居犬との関係の変化があって水飲み場まで行くのに気後れすることもあります。新しく若い犬を迎えた場合などにも注意が必要です。
急に水のお皿や容器が変わった
年齢を重ねると、頑固になったり警戒心が強くなったりする犬が多くいます。警戒心が高まっている中で、急に水のお皿の素材や形、容器(ペットボトルかお皿かなど)が変わった場合は、慣れるまで水を飲まなくなることがあります。
特に陶器のお皿からステンレスやプラスチックのお皿に変わった場合、その匂いを嫌うことが多いようです。
喉の渇きを感じづらくなっている
老衰の症状の1つともいえます。からだが脱水していると感じる機能が衰えていたり、認知症だったりするとそもそも水を飲みたいという欲求が薄くなり、水を飲む量が減ります。
対処法①丨まずはよく観察!
犬が水を飲まなくなった場合、原因によってとるべき対応が変わってきます。対応を考える前に、まずはその原因の手がかりを見つけることが大切です。前章で紹介した原因を参考に、自宅で観察してみることが最初の一手といえるでしょう。
ただし食欲不振や嘔吐など、水を飲まない以外に異常があればすぐに動物病院に相談をするようにしましょう。また、尿の色が明らかに濃くなっているなど脱水のサインが見られる場合にも、動物病院に相談をしたほうが良いといえます。
対処法②丨環境を工夫してみる
病気は隠れていそうになく脱水もない場合の対応は、家族側の工夫が大切になってきます。犬がなぜ水を飲みたがらなくなっているのか予想して、解決してあげられるのが理想的です。考えられる対応は以下のようなものがあります。
- 容器を変えたならば、元に戻してみる
- 同居犬との関係に原因がありそうであれば、安心できる場所(寝床やサークル内など)に水を複数おいてあげる
- 愛犬がよく過ごしている場所や、ごはん皿の横、段差を超えなくていいところ、トイレの近くなどに水を複数おく
- お皿の高さを少し高くしてみる(首の痛みが関わっていることもあるため)
どんな犬にも使える対応法というものは残念ながら存在しません。日頃よくよく犬の様子を観察しつつ、愛犬に合った対応を考えてあげるようにしましょう。最初から正確に原因を予想できることはまれで、試行錯誤が必要になることが大半です。
家族だけで抱え込んで悩んでしまうのではなく、獣医師や周りの飼い主たちの話を聞いたり助けを聞いたりしながら、気長に取り組むのがよいかもしれません。
もし原因の予想が難しかったり、認知症などの原因が関わっていたりする場合には、犬が自ら水を飲まなくとも水分を補充できるような対応が必要となります。この場合の対応は以下のようなものが考えられます。
- 犬用のミルクやスープで水分量を補う(ただし、味をしめてしまって余計に水を飲まなくなることも少なくない)
- ドライフードを与えている場合には、ウェットフードに切り替える。
ウェットフードへの切り替えは最も手軽で確実な方法です。ただし、ドライフードと比べて歯石が付きやすくなるため歯石予防のケアも一緒に取り入れてあげられるのが理想的です。それまでブラッシングに慣れていない犬がいきなり歯ブラシを受け入れるのは難しいと思われます。
口の中にスプレーするタイプなど、ブラシを受け入れられない犬用のケア用品も市販されるようになってきているので、そういったものから取り入れてみましょう。
まとめ
「水を飲まない」という症状は、背景に病気が関わっている可能性があるだけに限らず、脱水状態になれば新たな健康問題を引き起こすこともあり、愛犬の健康を考える上では見逃せない症状です。愛犬が水を飲んでくれないときは、まずはよくよく観察してあげることが大切です。脱水や病気のサインを見逃さないように注意するとともに、水を飲まない原因を探ってみましょう。困ったときには動物病院に相談するのも選択肢の1つです。周りの助けを借りながら、愛犬の健康を保っていけるとよいですね。