猫は、基本的に自分で排泄をしたがり、自分でご飯を食べたがる動物です。しかし加齢に伴って足腰が弱ったり、病気で起き上がれなくなったりしたときは、飼い主の介護が必要になります。
老猫の状況を見ながら、食事の世話や体や被毛のお手入れ、トイレの工夫や排泄の手助けなどをしてあげましょう。また、定期的な動物病院の受診も大切です。
ここでは、どのような介護をすればよいか具体的に紹介し、老猫も飼い主も快適に暮らせるコツを解説します。
目次
いつも清潔に体のお手入れ
猫はきれい好き。自分の被毛や皮膚を舐めて、お手入れをしています。しかし年をとるとだんだんと自分でできなくなってくるため、飼い主の手助けが必要になってきます。
こまめなブラッシング
年をとると舌で毛づくろいをするのが面倒になったり、届かない場所が出てきたりと、お手入れ不足になります。飼い主は、こまめにブラシをかけてあげましょう。
特に長毛種は毛が絡んだり、毛玉ができたりするので、小まめな手入れが大切です。力を入れすぎないように、やさしくブラッシングしてください。
マッサージで血行をよくする
飼い主のやさしい手でマッサージすることも大切です。血行もよくなり、コミュニケーションにもなります。その際は、「皮膚に異常がないか」「しこりがないか」「痛がる場所はないか」などもチェックしてください。「変だな?」と思うことがあったら、動物病院を受診するようにしましょう。
濡れタオルで拭く
全身を濡らすシャンプーは、体の負担になりがちです。汚れは濡れタオルで拭き取ってあげましょう。冷たいタオルでは老猫が驚いてしまうので、ほんのり温かくしたタオルがおすすめです。
お尻周辺は汚れやすいので、ていねいに拭きとってあげましょう。被毛はしっとりと濡れてしまうので、ドライヤーで乾かすことも忘れずに。
爪切りをまめに行う
年をとると、爪とぎもあまりしなくなってしまいます。爪が伸びすぎると丸まって伸びていくため、肉球に刺さってしまい危険です。また伸びっぱなしの爪は、カーテンの布に引っ掛けるなどケガの原因にもなりかねないので、まめに切ってあげることが大切です。
爪が太くなって丸まってしまったら、飼い主が自分で切るのは危険なので、動物病院で切ってもらいましょう。
お口や耳のお手入れ
歯周病予防のために、歯のお手入れは大切です。口臭がきつい、よだれを垂らす、ご飯が食べにくそう、という場合は、歯周病になっている可能性があります。早めに動物病院を受診してください。
また耳の汚れもイヤークリーナーなどを使って、きれいにしてあげましょう。綿棒で耳の奥につっこむのは危険なので、目に見える範囲のお手入れにとどめてください。目やにも、濡らしたガーゼなどでやさしく拭き取ります。
快適な寝床を作る
老猫になると、寝る時間がさらに増えていきます。からだの負担にならない快適な寝床を作ってあげましょう。
クッション性をチェック
寝床のクッション性は大切です。猫は体重が軽いので「寝たきりになりにくい」とは言われていますが、負担を減らしてあげる必要があります。低反発マットレスや梱包材などを上手に使って、クッション性のよい寝床を作りましょう。
清潔を保つ
寝床はいくつか替えを用意しておきます。こまめに洗って天日干しをして、清潔を保ちましょう。汚れてもいいように、不要になったTシャツやバスタオル、ペットシーツを敷いておくのもおすすめです。
保温に注意
人間にとっては快適な夏のエアコンも、老猫にとっては冷えすぎているということも。風が直接当たっていないか、ときどき確認することも大切です。日が当たりすぎて暑い場合は、すだれをかけたり、体を冷やすマットを置いたりなどして工夫しましょう。
秋から冬、早春は低温やけどに注意しながら、ペット用湯たんぽや保温マットで保温してください。
ベッドの安全性にも配慮を
若いときのように、高いところから身軽に降りられなくなることがあります。寝床は動きやすい場所に移動してあげましょう。出窓などお気に入りの場所がある場合は、家具などを置いて段差を作り、少しずつ降りられるようにすると安心です。
騒がしくない場所に設置
テレビの音が響く場所や、洗濯機の音などが響く場所は老猫の寝床には向いていません。人の出入りが激しい場所も落ち着くことができないため、家族の気配が適度に感じられる、静かな場所に設置してあげましょう。
おいしく食べる工夫
老猫になると、今まで食べていたドライフードが食べにくくなったり、食欲が落ちたりすることがあります。飼い主は老猫がおいしく食べられるように工夫をしてあげましょう。
食器を見直す
お皿状の食器を床に置いていると、首をかがめなくてはいけないため、老猫は食べにくくなってしまいます。高さのある食器にするか、台の上に置いてあげるのがおすすめです。それだけでも食事量が増えることもあります。また食器や老猫の前足が滑らないように、マットなどを敷いてあげましょう。
状況に応じた食べやすいフードを
老猫になると、歯周病や口内炎で食べるのを嫌がることも。そんなときはドライフードをふやかしたものや、ウエットフードがおすすめです。水分の摂取にもなります。
嗅覚が落ちてしまったことで食欲が落ちている子には、ほんのりと温めてあげましょう。香りがたって食欲が増します。手から与えると、食べてくれる子もいるので、ぜひ試してみてください。
自分で食べられない子への介助
動物病院では、シリンジ(大きな注射器のようなもの)に流動食を入れたものを、口に差し入れて食べさせてあげます。一気に入れるとむせてしまうので、ちゃんと飲み込んだことを確認しながら食べさせてあげましょう。
トイレの見直し
「粗相が増えた」ということがあれば、もしかしたらトイレが使いにくいのかもしれません。老猫のトイレは若いときのままではなく、見直しが必要です。
ふちの低いものに変える
若いときは軽々とまたいでいたトイレも、年を取るとつらくなるもの。ふちが低いトイレに変更してあげましょう。または、ステップになる台やスロープを、トイレの横に設置するのもおすすめです。
低くしてもまたぐのが大変そうな場合は、犬用のトイレトレーにペットシーツを敷いたトイレに変更してみてください。トイレに間に合わない場合は、寝床の近くにトイレを移動してあげましょう。
排泄を手伝う
足腰が弱って、自分でうまく排泄ができない場合は、体を支えてあげるなど手伝ってあげましょう。なるべく自分で排泄したい、という猫の気持ちを尊重します。
便秘で便がうまく出せないという場合は、やさしくお腹をマッサージするのも効果的。それでもうまくいかない場合は、動物病院に相談しましょう。
寝たきりの子にはおむつも
起き上がれない老猫には、おむつを付けることも検討しましょう。歩きながらあちこちで排泄してしまう子も、おむつを付ける方が飼い主のストレスも減ります。
ペット用のおむつはいままで犬用が主流でしたが、最近は猫用のおむつも販売されています。しっぽの穴を開ける手間がかかりますが、人間の赤ちゃん用おむつでも大丈夫です。おむつをつけたら、蒸れないようにこまめに取り換えてください。
まとめ:老猫の介護
たとえ寝たきりになっていなくても、老猫になるとできなくなることが増えてきます。老猫が少しでも快適に暮らせるように、飼い主のこまめな介護は欠かせません。とはいえ、猫は自分でやりたがる動物もあるので、老猫の気持ちを尊重することも大事です。
食器や寝床、トイレをちょっと見直すだけで、ぐっと楽になります。ブラッシングやマッサージでコミュニケーションを取りながら、猫も飼い主も快適に過ごせる介護をしていきましょう。