長生きしている犬だけがなることができる病気、認知症。「この症状、認知症かも?」となんとなく感じていつつも、認知症の具体的な症状を知識として明確に持っている飼い主は実は少ないのではないでしょうか。
この記事では認知症の犬ではどういった症状が認められやすいのかをまとめています。ここにまとめた症状があるからといって、すぐに認知症と診断されるわけではありませんが、知識の整理にぜひ活用してみてくださいね。
目次
症状その1. 徘徊
ヒトの認知症の症状といえば、徘徊はとてもメジャーな症状といえるのではないでしょうか。ヒトの認知症では、あてもなくウロウロと歩き回る症状を「徘徊」と呼びます。
イヌでもヒトの「徘徊」と同様の症状が認められることが知られています。このときの犬の様子は、周囲からみれば、なんの目的もなく、ただ歩き回っているだけのように感じられるかもしれません。
ヒトもイヌも、以前は「認知症によって徘徊している人(犬)には本当に目的も動機もない」と考えられていました。しかし近年では、「徘徊している側でないとわかりづらい目的や動機がある」という考え方に変わりつつあります。徘徊が認められた場合には、なにかの目的や動機がないか探ってみることをおすすめします。
たとえば
- 認知症に伴ういいようのない不安に襲われており、それを紛らわそうとして歩き回っている
- 自分がどこにいるのかがわからなくなり、居場所を探し回っている
- ご飯を食べたことを忘れ、食べるものを探し回っている
といったことが徘徊の目的・動機として考えられます。安心させることができれば、食べ物を認識させることができれば徘徊が減少することもありえるでしょう。
とはいえ、徘徊している目的や動機を突き止めるのが実際には難しいことも事実です。それらを突き止められないときには、徘徊をやめさせようと努力するのではなく、徘徊が続いても犬も人も生活の質が大きく落ちないように、うまくつきあっていくという発想に切り替えて対応することが大切です。
▼徘徊についての詳細は下記記事を参考にしてください。
老犬の徘徊について原因と対応を解説!
症状その2. 昼夜逆転(夜鳴き)
イヌの認知症に代表的な症状の1つが「昼夜逆転」です。徘徊よりも周囲の家族の生活の質に悪影響を与えやすく、特に「夜鳴き」を伴う場合には、家族の睡眠が妨害されることが多くあります。
そればかりか、鳴き声が大きい場合には近所トラブルの原因となることも。慢性的な睡眠不足や近隣住民との間のトラブルによって、家族が肉体的・精神的に追い込まれてしまわないように対策が必要です。
昼夜逆転や夜鳴きは、飼育環境の整備や日中の過ごし方の工夫だけで対応することが困難な場合も多くあります。動物病院で睡眠剤や精神安定剤などを処方してもらうことも可能なので検討をしていきましょう。犬を支えていくべき家族が倒れてしまっては元も子もありません。
家族が今後も愛犬と一緒に暮らしていくために、薬の力を借りることは決して悪い選択肢ではありません。睡眠剤や精神安定剤というと副作用が心配になる方も多いかもしれませんが、実のところ副作用が問題となるケースはまれです。少ない用量から試していくことも可能なので、かかりつけの獣医師と相談しながら検討できるとよいですね。
▼犬の夜鳴きについて詳しくはこちら
老犬の夜鳴き(夜泣き)!考えられる原因とは?対処方法もご紹介
症状その3. 排泄の失敗
昼夜逆転とならんで家族の生活の質を大きく落としやすい症状が「排泄の失敗」です。認知症の進行によって排泄に関わる筋肉のコントロールができなくなったり、そもそもトイレで排泄しなければならないことを忘れてしまったりすることにより症状が生じます。
認知症が背景の場合では、再びトイレで排泄するようにさせることはほぼ不可能といってよいでしょう。犬がトイレで排泄ができなくても、家族が困らないように工夫をしていく姿勢が大切です。具体的にはオムツを利用したり、行動範囲をコントロールして、その範囲内ならどこで排泄されてもかまわないよう環境を整えたりといった対策が考えられます。
▼愛猫が使いやすいトイレの詳細記事はこちら
老猫が喜ぶ快適トイレ!いつまでも自分で排泄するために
まとめ
認知症は長生きしている犬だけがなれる病気です。家族があまり悲観的にならずに、長生きの証明だと前向きに捉えられるようになると、犬も人もストレスをためこむことなく認知症と向き合っていきやすいのではないでしょうか。
また、環境面の整備だけではどうしても家族の生活の質に影響がでてしまうこともあります。ときには薬のちからを借りることも決して悪いことではありません。薬を使うか使わないかに関わらず、かかりつけの獣医師に愛犬の認知症をどう受け止め、どう向き合っていったらよいのか相談できるとよいかもしれませんね。