老犬に突然痙攣(けいれん)が起きたとしたら、とても驚き戸惑ってしまう飼い主が多いのではないでしょうか。
この記事では、老犬の突然の痙攣発作に直面してしまった場合に、飼い主がとるべき対処法と原因について解説します。
目次
老犬の突然の痙攣!飼い主がとるべき対応は?
痙攣とは、犬自身の意思とは関係なく、筋肉が反復的に収縮することです。
痙攣発作の代表的な症状は、犬かきのように足をバタバタさせる、体中を震わせる、体を弓なりに反らすなどがあります。また、正常な意識がないことも多いでしょう。
痙攣は生命に関わる緊急性が高い症状の1つです。決して自宅で様子をみられる状況ではなく、直ぐに動物病院に連れて行く準備をしましょう。動物病院に連れていく最中、あるいはその準備を進めながら飼い主がとるべき対処法には以下のようなものがあります。
痙攣を起こしている最中
・犬に刺激を与えないため、触れないように配慮する
・犬がケガをしないよう周囲に置いてある物を片づけてスペースを確保する
・頭部を床や壁などに打ち付けないようタオルやクッションなどで保護する
・飼い主自身が噛まれてケガをしないよう無理して対処はしないよう注意する
・筋肉が発する熱で体温が異常に上昇することもあるため、なるべく周囲を涼しく保つ
・獣医師に痙攣中の様子や持続時間を正確に伝えられるよう動画を撮影する
痙攣中に犬が鳴き叫んだり、失禁や泡を吹いていると、体を抱きしめたりなでたりして治めてあげられないかと考えてしまうかもしれません。しかし、痙攣はそういった接触刺激で治まることはありません。むしろ、その刺激が脳への過剰な興奮を促してしまい、発作を悪化させてしまうリスクもあるため、ぐっとこらえて接触は避けましょう。
また、意識が正常でない時には、飼い主のことを認識できず、激しく噛みついてしまうことも少なくないため注意が必要です。
痙攣を起こした後
・痙攣が治ったら優しく声をかける
・痙攣後の様子も観察する(ボーッとしていた、よだれが出ている、フラついているなど)
・いつもの状態に戻るまで動画の撮影を続ける
・誤食の痕跡がないか周囲を確認する
そのうえで、早めに動物病院を受診するようにしましょう。
動物病院に連れていくタイミングとしては、痙攣が治まってからがベストですが、5分以内に痙攣が治まらず続いたり、何回も繰り返したりするときには、ケガに注意しつつそのまま連れて行きましょう。そのような場合には、大きな病気が潜んでいることもありますし、命に関わることもあります。
動物病院で行われる処置や治療法は?
動物病院に着いてまず行うことは、受付スタッフに「痙攣という緊急性の高い症状が出た」と伝えることです。そうすることで、診察の順番を早めるなどの対応をとってもらえることもあります。獣医師が行う処置や治療法には以下のようなものがあります。
・動物病院到着時点でも痙攣が続いている場合は、検査は後回しにして各種薬剤の投与や酸素吸入などの緊急治療を行うことが多い
・通常、検査はまず血液検査を幅広い項目に渡って行う
・必要に応じて、安全に検査を行えるかどうか動物の状態をみながら、超音波検査やX線検査に進む
・最終的にCTやMRI検査が必要となれば、全身麻酔のリスクを伴うことや、費用も高額となることから、実施するかどうかまで含めて飼い主と相談しながら進めていく
動物病院到着時点でも痙攣が続いている場合、その対応にはとにかくスピードが命となります。
飼い主側も獣医師に的確に症状を伝えられるように動画を撮影したり、伝えたい情報をあらかじめ整理しておくことがおすすめです。
痙攣=てんかんは大間違い!てんかん以外に考えられる痙攣の原因とは?
犬の体の動きは、脳から発信される電気信号によってコントロールされています。
痙攣とは、何らかの原因により、この電気信号が異常に発信されてしまうことで、犬自身の意思とは関係なく、筋肉の反復的な収縮が起こることです。
飼い主によくみられるのが、「痙攣=てんかん」という誤解です。
てんかんは、てんかん発作を繰り返し起こす脳の病気のことです。てんかん発作とは、脳神経細胞の過剰な興奮と過度の放電により、痙攣や筋肉のこわばり、意識障害あるいは身体的な症状などが引き起こされます。
そのため、てんかんは脳の病気のことで、あくまでも痙攣の原因の中の1つにしか過ぎません。
痙攣を起こす原因は、腎不全、肝不全、中毒、感染症といった脳外に原因がある場合(非てんかん性発作)と、てんかんの大きく2つに分けられます。ここでは、非てんかん性発作(反応性発作)について解説します。
中毒
自然毒や薬品、細菌の毒素などにより急性中毒や慢性中毒を起こします。
尿毒症
慢性腎臓病の末期や、中毒物質の誤食などによっておきる急性腎不全などで起こり、尿として出るはずの毒素が体内にたまり震えや痙攣などの神経症状が現れることがあります。
高アンモニア血症
急性肝臓病や慢性肝臓病、門脈シャントなどにより、肝臓の機能障害が起こった場合、肝臓で代謝されるはずの毒素が体内に溜まり、震えや痙攣などの神経症状が引き起こされます。
その他
その他には熱中症や低血糖、感染症などが原因の場合があります。
【もう1つの痙攣の原因】てんかんの症状と引き起こす原因
てんかんの症状と引き起こしてしまう原因を解説します。
てんかんの症状の分類
・痙攣症状によるてんかん発作の分類
身体の一部分の動作や特定の感覚などの限られた機能に症状がみられる部分発作(焦点性てんかん発作)、体の全体に発作症状が引き起こされる全般性てんかん発作(全身性てんかん発作)、非けいれん性全般てんかん発作と分類されます。
・発作の回数による分類
初めての発作を1回だけ起こす単発性発作、発作を2回以上起こす再発性発作、1日に2回以上の発作を起こす群発性発作に分類されます。
てんかん発作の中で一番危険な状態は、発作からの回復がみられないまま次の発作を繰り返す重積発作です。
犬がてんかんを引き起こす原因
犬のてんかんは原因により、次のように特発性、症候性、潜因性の3つに分かれます。
・特発性てんかん
特発性てんかんとは、CTやMRIなど考えうる全ての検査をしても、特定の原因が確認されないてんかんです。
・症候性てんかん(構造的てんかん)
症候性のてんかんは特発性のてんかんの次によくみられるもので、水頭症、脳炎、脳腫瘍など脳に明らかな異常が認められるてんかんです。
・潜因性てんかん
潜因性のてんかんは症候性のてんかんと思われますが、検査で異常がみつけられないものを指します。潜因性の原因として事故やケガなどによる脳の外傷によるものが大きな割合を占めているとされています。
老犬が痙攣をしないための予防法はある?
腎不全、肝不全、中毒、感染症といった脳外に原因がある場合
腎不全、肝不全などの疾患に対しては、定期的な健康診断を受け、早期発見・早期治療により予防に努めましょう。感染症は、ワクチンの接種により予防できる可能性が高まります。また、中毒は異物誤飲で起こる場合が多いため、飼い主は犬が誤飲しないように注意しましょう。
てんかんが原因の場合
てんかんの発症を予防する対策はありません。ただ、強いストレスや刺激、環境の変化によって発作が引き起こされることもあるため、獣医師と相談しながら、発作が起こらないような対策を行いましょう。
まとめ
痙攣は専門知識を持った人間による緊急検査および治療が必要な、命に関わるとても危険な症状です。
万が一痙攣が起きた際には、普段通っている病院だけではなく、もっと家に近い病院や、かかりつけが対応できない深夜や早朝の時間帯に駆け込める病院もリストに加えておきましょう。
緊急時にも迅速に対応できるよう、準備が出来ていると安心ですね。