犬の膀胱炎は症状がわかりやすく、飼い主さんが自分で気づけることが多い病気の1つです。逆にいえば、愛犬が膀胱炎かもしれないという、不安を抱きやすい病気ともいえるでしょう。
そこで今回は、犬の膀胱炎の原因や症状、動物病院での検査・治療や、ご自宅でできる対処法・予防法までをご紹介します。愛犬が膀胱炎かも、あるいは膀胱炎になってしまったという飼い主さんはぜひ目を通してみてください。
目次
犬の膀胱炎とはどんな病気なのか?
まずは、膀胱炎の原因や症状について解説します。また、膀胱炎が悪化して引き起こされてしまう、危険な病気についてもご紹介しているので、ぜひチェックしてみてください。
膀胱炎の原因
■感染
膀胱炎の最も多い原因は、細菌感染です。老犬になると免疫力の低下などの理由により、細菌感染が起きやすくなります。細菌感染は、ストルバイト結晶(リン酸アンモニウムマグネシウム)という物質の形成原因となることもあります。一方、真菌(カビ)やウイルス感染による膀胱炎は非常にまれです。
■尿路結石(尿路結石症)
細菌感染に次いで多いのが尿結晶、尿路結石による膀胱炎です。尿結晶が固まり大きくなったものが、尿路結石と呼ばれています。結晶の中にも何種類かあり、それぞれ治療法が異なります。犬に多いのは、ストルバイト(リン酸アンモニウムマグネシウム)およびシュウ酸カルシウムという尿結晶です。
■膀胱腫瘍
老犬で特に気をつけたいのが、膀胱腫瘍による膀胱炎です。膀胱に腫瘍ができる頻度はそう多くはないとされていますが、危険な状態を引き起こしやすい原因となりえます。
■前立腺炎
未去勢雄の老犬で気をつけたい原因のひとつです。膀胱に隣接している前立腺と呼ばれる臓器が炎症を起こし、それが膀胱にまで広がってしまうことがあります。
膀胱炎の症状
■頻尿
膀胱炎を発症すると、少し膀胱に尿がたまっただけでも、尿意を催すようになり、少量ずつの尿を何回もするようになります。膀胱炎の代表的な症状です。
老犬の尿漏れについては、こちらの記事で紹介しています。
老犬の尿漏れが気になる!原因になる病気と治療法を解説
■血尿
膀胱からの出血が尿に混ざることで、血尿を出すことがあります。こちらも代表的な症状の1つです。また飼い主さんが最も気づきやすい症状ともいえるでしょう。
■排尿痛
膀胱内での炎症が尿道にまで広がり、排尿するときに痛みを伴うことがあります。犬の仕草としては、排尿を嫌がるようになる、排尿時にキャンと鳴くなどのように観察されるでしょう。
■排尿不全
排尿しづらそうな様子を見せたり、全く排尿できなくなったりしてしまう症状です。また、いつもはトイレで排尿できるのに、全く違う場所で排尿するといったこともあります。
■尿の性状の変化
細菌感染があれば尿が膿んだようにみえたり、大量の尿結晶があればキラキラと光を反射しているようにみえたりすることがあります。尿が臭うようにもなります。
悪化させると危険な疾患
■腎盂腎炎
膀胱内に感染している細菌が、さらにからだ
の奥深くにまで入り込み、腎臓にまで感染してしまうケースです。腎臓に感染してしまった場合には、全身的な炎症を引き起こしたり、急性腎不全を引き起こしたりと、命に関わる事態となりえます。また、腎臓の機能が低下し、末期の状態になると尿毒症を引き起こす可能性もあります。
■尿路閉塞
尿路結石や膀胱腫瘍によって、全く排尿ができなくなった状態です。これは非常に危険な状態であり、尿路閉塞が起きてから24時間で、さまざまな症状が引き起こされ始め、48時間以内には死亡するといわれています。
膀胱炎になったときの検査と治療
ここからは、膀胱炎を疑った際に動物病院で行われる検査や、診断後の治療について解説します。
動物病院で検査を受ける!
■尿検査
膀胱炎を疑う場合に最優先で行う検査です。人と同様に尿試験紙によって尿のpH(ペーハー/酸性・アルカリ性の指標)や血尿の有無を調べたり、顕微鏡検査によって細菌や炎症細胞、尿結晶が尿中にあるかどうかを調べたりします。また尿の濃さを数値化することもできます。
■レントゲン検査
尿路結石を見つけるためにとても優れた検査です。尿路結石の有無だけでなく、その位置や個数の目安まで調べることができます。
■超音波検査
膀胱壁の観察に優れた検査です。壁の厚さを調べることで、膀胱炎がどの程度疑わしいか目安をつけたり、腫瘍の有無を調べたりすることができます。また尿路結石の有無も同時に検査可能です。
治療方法について
■感染治療
最も多い細菌感染は、抗生物質の投与が行われることになります。このとき、どの抗生物質が効くのかどうか検査をしてから薬を選択することもあります。真菌・ウイルス感染の場合には、それぞれに合った薬で治療をするというものです。
■食事療法
尿路結石あるいは尿結晶が認められたときには、療法食による治療を行うことがあります。ストルバイト結石については、食事療法だけで治療することができます(細菌感染を伴う場合は抗生物質も同時に投与します)。一方、シュウ酸カルシウム結石は食事療法によって再発予防はできますが、既に形成されてしまった石を除去することはできません。
■外科治療
シュウ酸カルシウム結石や、膀胱腫瘍が見つかった場合には、外科摘出が行われる場合があります。なお、外科摘出ができないほどの腫瘍の場合には、抗がん剤治療が行われることもあります。
再発しやすい病気!対処法と予防策
膀胱炎は犬の生活習慣や、体質、遺伝的なものも相まって発症するものなので、再発しやすい病気といえるでしょう。最後に、飼い主さんがご自宅でできる対処法や予防策を解説します。
疑わしい場合は動物病院へ
まずは日頃から、愛犬の排泄や尿の状態をよく観察することが大切。膀胱炎は早期発見、早期治療が非常に重要な病気です。何らかの異変を感じたら様子見したりはせず、すぐに動物病院の獣医師に相談しましょう。受診の際は、新鮮な尿を持参すると診察もスムーズに進みます。
水分摂取を促そう
水分摂取を促すことは、尿路結石による膀胱炎の発症・再発予防に重要です。尿路結石は尿が濃ければ濃いほど、また膀胱内にある時間が長ければ長いほど形成されやすくなります。水分摂取量を増やすことで尿を薄くし、また尿量を増やして排尿頻度を増やすことで、尿が膀胱内にある時間を短くすることができます。
おしっこを我慢させない
おしっこを我慢させるということは、尿が膀胱内にある時間を長くしてしまうということ。そうすると尿路結石が形成されてしまうリスクが高まるので、おしっこはなるべく我慢させないようにしましょう。
清潔を保とう
犬の膀胱炎の最も多い原因は、細菌感染です。その細菌はどこから感染するのかというと、糞便の菌が尿道口(陰茎や外陰部)から尿道をつたって膀胱までくるケースが大半になります。ですから、尿道口が便などで汚れたまま放置されることがないようにしましょう。
食事管理が必要なケースも
ある種の尿路結石(結晶)による膀胱炎の場合は、尿のpHを調節したり尿量を増やす作用を持ち、食事中の結石の材料となる成分を制限している食事を与えたりすることが治療に必要です。犬に多いストルバイトとシュウ酸カルシウムではこのような食事管理が行われます。
まとめ:繰り返さないように予防しよう
老犬になると免疫力の低下から細菌感染を起こしやすくなったり、飲水量の低下から尿路結石が形成されやすくなったりと膀胱炎を発症するリスクが高まります。
日頃からしっかりと様子を気にかけ、異変を感じたらすぐに獣医師に相談し、必要と判断されれば動物病院で検査・治療を受けましょう。また一度治った後でも自宅での再発予防が重要となります。この記事を参考に、愛犬の健康管理に役立ててあげてください。