猫にもヒトと同様に「喘息」という名のつく病気があります(一般に「猫喘息」と呼ばれています)。「ヒトの喘息」と似たような症状が認められ、病気が起きる仕組みも似ていると考えられることからその名がついています。一方で、「ヒトの喘息」と「猫喘息」には異なるところもあります。この記事ではその点も含めて解説しつつ、「猫喘息」についての情報をまとめています。
目次
猫喘息ってどんな病気?
猫喘息は、ヒトの喘息と同様に呼吸困難など呼吸器系の症状を起こす病気であり、発症してしまうと猫の生活の質を大きく落としてしまいます。また治療の開始が遅れてしまって病気が進行すると、最終的には命にも関わる深刻な状態となることもあります。
猫喘息にもヒト喘息と同じように過剰な免疫反応(アレルギー)が関わっていると考えられてはいますが、実はまだわかっていない部分も多い病気です。猫の場合は若齢から高齢までさまざまな年齢で発症しうるとされ、発症リスクを高める要因として、ストレスや気候の変化、タバコの煙、ハウスダストなどがあるだろうと考えられています。
猫の喘息はどんな症状が出るの?
猫喘息の症状は気管に炎症が起き、炎症によって気管が狭くなることで引き起こされます。病気が進行すると、それだけ気管も狭くなっていき症状の重症度も増していきます。重症化した場合には、治療をしても気管の狭窄が戻らなくなってしまうこともあります。
そのため、早期発見・早期治療がとりわけ重要な病気です。主な症状には以下の3つがあります。これらの様子がみられたら、なるべく早く動物病院に相談に行くようにしましょう。
- 呼吸回数が多くなる(正常目安は安静時に40回/分以内)
- 運動量が落ちる、元気食欲がなくなる
- 呼吸の音に雑音が混じる(多いのは喘ぐような音、ヒューという音)
注意したいのが、ヒトの喘息でよく見られるような以下の症状は猫では少ない点です。これらの症状が猫で認められたときには、相当に重症であると考えられます。
1.咳
猫はほとんど咳をしない動物。咳がでているのはかなり重症と考えられます。
2.開口呼吸
猫が口を開けて呼吸しているのは非常に危険な兆候です。重度の呼吸不全状態である可能性が高いですので、可能な限り早く動物病院を受診するようにしましょう。気づいたのが夜間だとしても、翌朝まで待たずに夜間対応してくれる病院を探して受診するべき状態といえます。
動物病院で行われる検査・治療
動物病院において、猫喘息を疑ったときに診断をつけるために行われる主な検査や、診断後の治療についてまとめています。
主に行われる検査
●問診・身体検査
その後の検査方針を決めるうえで重要なステップとなります。問診を受ける際には、呼吸状態についてだけではなく、元気食欲などの全身的な状態についての情報も獣医師に的確に伝えられるようにしておけるとよいでしょう。
咳などの発作的に起きる症状が自宅で認められている場合には、動画を撮影してそれを獣医師に見せられると理想的です。身体検査では、主に聴診によって心臓や肺の音を聴いたり、触診・視診をしたりして異常がどこにありそうか目安をつけます。
●レントゲン検査・超音波検査
呼吸状態の異常が、肺炎や肺水腫、心臓病など、猫喘息以外の原因からくるものではないかどうか調べます。猫喘息という診断をつけるにあたって、非常に重要な役割を担う検査です。
●血液検査
呼吸器系の症状のときには、血液検査は補助的な情報を加える程度で、診断に決定的な情報をもたらすことはあまりありません。特にいわゆるアレルギー検査は、猫ではヒトほど一般的に行われてはいません。一方で、元気食欲低下などがあり全身の状態の概観を把握したいときには血液のスクリーニング検査が有用です。
主に行われる治療
猫喘息は、前述のような検査をしつつ、最終的にはそれらの結果を踏まえての総合的な判断によって診断がなされます。緊急性が高い場合(重度の呼吸困難を起こしている場合)では酸素吸入(マスクや酸素室)によって呼吸状態を落ち着かせることが優先されます。状態によっては検査診断を行うよりも優先して、酸素吸入が行われることもあります。そのまま酸素室で数日間の入院治療を行うことも少なくありません。
重症度・緊急性が低い症例では、診断をつけた後に主に内服薬による治療が行われます。内服薬は状態に合わせて複数種類組み合わされることが多く、主には以下のカテゴリーに属する薬から状態に合わせて選択されます。
- 抗アレルギー薬
- 抗炎症薬
- 去痰薬
- 鎮咳薬
- 気管支拡張薬
まとめ
猫喘息は放置すると命に関わることもある病気です。呼吸に異常を感じたらなるべく早めに動物病院を受診することが大切です。ヒトと違うということで注意したいのが、猫において「咳」と「開口呼吸」は相当重症の兆候である点です。
この2つのどちらか一方でも認められたときには、かなり緊急度が高いといえます。たとえ深夜だったとしても、かかりつけが休みだったとしても対応してくれる動物病院を探すようにしましょう。治療を開始してコントロールがとれれば、長くつき合っていくこともできる病気です。普段から様子をよく観察して、異常に早めに気づけるよう努めていられるとよいですね。