【獣医師監修】老猫が水をよく飲むときは注意!病気のサインかも?

老猫がよく水を飲む

猫はもともとあまり水を飲まない動物です。猫の先祖は中東の砂漠で過ごしたと言われ、水がなくても生きていけるようになっていました。そのため水を飲む量を増やして、膀胱炎などを予防したほうがいいと聞いたことがあるかもしれません。

しかし、たくさん飲めば安心というわけではありません。むしろ飲みすぎは、病気のサインである可能性が高く注意が必要です。老猫の水を飲む量の判断方法や、どのような病気が考えられるか解説します。

老猫が水の飲みすぎと判断する基準はどれくらい?

老猫が急に水をよく飲むようになったら要注意です。

ただ、気温や運動量、フードなどで一時的に変動することもあるので、どのくらい水を飲んでいるか把握する必要があります。

猫の一般的な飲水量は?

一般的に猫は1日あたりどのくらいの水を飲んでいるかというと、目安となる飲水量は体重1kgあたり、およそ50mlと言われています。つまり2kgの猫なら100ml、3kgの猫なら150ml程度ということになります。

毎日の飲水量が1kgあたり60mlを超えたら、飲みすぎと判断したほうがいいでしょう。

飲水量をチェックしよう

老猫がどのくらいの水を飲んでいるか、飼い主は毎日チェックしましょう。
飼い主の直感や観察で「飲水量が増えた、減った」というのももちろん大切ですが、およそでも愛猫の飲水量がわかると診察にも役立ちます。

いちばんわかりやすいのが、水飲み器に入れる水の量を決めること。少し手間はかかりますが、計量カップなどで1日あたり200mlなど測って水を入れます。夜寝る前に、残っている水の量から老猫が飲んだ量を測定します。

蒸発分もあるほか、ウエットフードを食べている猫と、ドライフードを食べている猫では多少飲水量が異なるかもしれませんが傾向はつかめます。
1日を通して明らかに飲水量が多い場合は、受診してみましょう。

夏場やストレスなど病気以外で飲水量が増える原因

水をよく飲むようになったら、必ずしも病気が原因とは限りません。病気以外に考えられる原因を解説します。

食事の変化

水分量が多いウェットタイプから、水分量の少ないドライタイプのものにキャットフードを変更はしてはいないでしょうか。もし、ウェットタイプからドライタイプに変えたのであれば、食事から摂取していた水分を、水を飲むことによって補っている可能性があります。

ストレス

猫がストレスを抱えると、自律神経の調整がうまくいかず、水をたくさん飲む場合があります。

夏の高い気温

夏場の暑い日などは、猫は冷たい水を飲んで体温調節することがあります。

老猫が水をよく飲むとき考えられる病気

老猫が水を飲みすぎるときの病気

老猫が「水をよく飲む」ことは病気の症状の1つであることがあります。
しかし、猫は体調不良を隠す動物です。そのため具合が悪いことに飼い主が気づけないこともあります。

「水を飲む」など行動の変化に気づくことで、体調不良に気づいてあげられるというのは、大きなメリットです。

慢性腎不全

慢性腎不全は、腎臓の機能が低下する病気です。老猫がかかりやすい病気として知られています。

加齢に伴ってだんだんと腎臓の機能が低下してくると、濃い尿が作れず薄い尿を大量に出すようになります。すると水分が不足するため、水をたくさん飲むようになってしまいます。
一度機能を失った腎臓は元に戻すことはできません。

糖尿病

糖尿病でも飲水量が増えることが知られています。猫の糖尿病は人間の「2型糖尿病」である「インスリンが出ているものの量が少ない」「インスリンが出ているのに、効きにくい状態」と類似しています。

症状は水をたくさん飲むほか、尿の量も大変多くなります。糖尿病の初期では食欲もあり、元気なことが多いです。とくに肥満気味の老猫は糖尿病になりやすいので注意しましょう。

治療はインスリンの投与や、糖尿病用の療法食などを食べさせることが中心です。

甲状腺機能亢進症

甲状腺機能亢進症は、10歳を超えた老猫によくみられます。猫のノドの左右にある甲状腺といわれる器官から分泌される甲状腺ホルモンが過剰に分泌される病気です。甲状腺ホルモンが過剰に分泌されるため、代謝が盛んになり活発になります。

初期症状に見られるのが「水をたくさん飲む」です。他にも落ち着きがない、食欲がやたらと増す、ソワソワ落ち着きがない、攻撃的になるなどの症状が出てきます。
飼い主からみると、大変元気に見えるため「うちの子は歳をとってもいつまでも活発で良い」とされがちです。しかし、ずっと活発というのは身体に負担をかけていることにもなるので注意が必要です。

その他にも急性腎不全、腎盂腎炎、尿崩症、副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)、副腎皮質機能低下症(アジソン病)、高カルシウム血症などの病気が考えられます。

多飲多尿にならないための予防法

愛猫が多飲多尿にならないために、どんな予防方法があるのでしょうか。

新鮮な水を飲めるようにしてあげる

老猫の健康のためにも、複数の水飲み場を用意したり、自動給水器を取り入れたり、ウェットフードやふやかしたドライフードなどを与えたりと、水分を取れる工夫をしてあげましょう。

愛猫の飲水量や尿量の変化に日頃から気を付ける

飲水量と尿量の増加は、病気の兆候に気づくための重要な手がかりとなります。日常的に前述した目安以上の水の量を飲んでいる場合には何らかの病気の可能性があるため、早めに動物病院を受診しましょう。

また、尿は量だけでなく色やニオイもチェックするようにしましょう。多尿の場合は、尿が濃縮されずに量が増えるため、色が薄く、ニオイもあまりしなくなります。

ストレスのかからない生活を送る

ストレスも多飲多尿の原因となるため、過度なストレスがかからないよう心がけましょう。
また、慢性的なストレスや過度のストレスが猫にかかると、免疫力が低下し、様々な病気にかかるリスクも高まります。
愛猫の心身の健康のためにも、寒さや暑さ、騒音などストレスの要因となるものをなるべく取り除くことが大切です。

定期的に健康診断を受け早期発見に努める

猫は痛みや不調をあまり表情には出さない動物のため、体調が悪そうだと飼い主が気づく頃には、既に病気がかなり進行していることがよくあります。
そのため、病気の早期発見・早期治療のために定期的な健康診断を受けるようにしましょう。

まとめ:老猫が水をよく飲むときは受診

老猫が水を飲みすぎるときの注意点
老猫が「水をよく飲む」「水を飲みすぎる」という場合、なんらかの病気のサインであることが考えられます。尿の量や食欲もチェックすると同時に、飲水量を把握することが大切です。

「水を飲みすぎる」はさまざまな病気の初期症状が多いため、早く気付いてあげることで早期治療が可能になります。早期治療は老猫にとっても飼い主にとっても負担が減るのもメリット。飲水量が明らかに増えたというときは、動物病院を受診しましょう。

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WITHこの記事を監修した人

西岡優子

西岡優子

【経歴】 北里大学獣医学部獣医学会 卒 砂川犬と猫の病院 勤務医 都内の獣医師専門書籍・雑誌出版社 編集者 吉田動物病院 勤務医 獣医師として就労する傍ら、犬・猫・小動物系ライターとして活動中 【資格・所属】 ●一般社団法人 日本ペット技能検定協会 認定 ドッグライフアドバイザー ●西日本心臓病研修会 心エコー技術トレーニングコース 修了 ●獣医画像診断学会 所属

ABOUTこの記事をかいた人

ふぁみまる編集部

今まで犬を始め、フェレット・ハムスター・カメ・インコなどさまざまなペットを飼育してきました。現在は、ジャックラッセルテリアと雑種の2匹を可愛がっています。趣味は愛犬たちとの旅行です。 このメディアでは、多くの飼い主の方々の不安や疑問・困っていることを一緒に解決していきたいと考えています。