いわゆる「痙攣発作」は、猫が示すことがある症状の中でも緊急度が高く、命に関わることが多い病気です。もし愛猫が痙攣発作を起こした場合にはなるべく早く動物病院を受診することが大切です。
この記事では「痙攣発作とはどんな症状なのか」ということから「動物病院に連れて行くまでに飼い主がとれる対応」「痙攣発作の原因」までを解説します。
目次
痙攣発作とは
一般的にいわれる「痙攣発作」は専門的には細かな種類がありますが、ここでは大まかにみたときの特徴と、なぜ起きるのかということを解説します。
痙攣発作の特徴
痙攣発作というと、からだを激しく震わせたり、ピンと伸ばしたりといった症状が一般的です。症状は全身に生じることもあれば、身体のどこか一部だけに生じることもあります。痙攣発作が発生すると、その多くは数分間程度継続します。
痙攣発作中は自分の意思ではからだをコントロールできず、また意識を失っている場合も多くあります。
痙攣発作はなぜ起きる?
いわゆる痙攣発作は、筋肉が意思のコントロールを離れて異常な収縮を起こしている状態です。普段筋肉の収縮は脳の働きによってコントロールされており、脳神経の興奮が信号となって筋肉に「収縮しろ!」という命令が伝わります。
ところが脳神経が何らかの原因によって異常に興奮してしまうと、意思とは関係のないところで「収縮しろ!」という命令が出され続けるために前述のような症状が生じます。脳神経の異常な興奮を引き起こす原因はさまざまあり、詳細は後述します。
痙攣発作が起きた時の対応
痙攣発作は何の前触れもないまま突然に激しい症状が発生するケースも多く、飼っている猫が痙攣発作を起こした経験がない飼い主はパニックになってしまいがちな症状ともいえます。この章では対応のポイントについて解説していますので、万が一に備えて参考にしてみてください。
動物病院で診断治療を受ける
痙攣発作は命に関わることが多い症状であり、なるべく早く動物病院に連れていき治療をうけさせるという対応が大切となります。ただし、原則として動物病院へ連れて行くのは「発作がおさまってから」です。痙攣発作がまさに起きている最中に移動させようとすると、頭部を打ちつけたり落下させてしまったりする危険があるからです。
多くの痙攣発作は5分間以内におさまります。後述の対応をとりながら、じっと発作がおさまるのを待つのが最善といえます。ただし、発作が5分間以上継続する場合には薬を使って発作を抑える必要がでてきます。落下などのリスクには十分注意しながら病院へ連れていきましょう。
発作がおさまるまでにできること
発作がおさまるのを待つ間に行うべき対応を紹介します。
- からだ、特に頭を床や机などにうちつけないよう、周囲のものをどかしたり枕を敷いたりする
- 口周りは触らない
- 動画を撮影する
- 動画撮影ができなければ発作の継続時間を測る
- 糖尿病治療中の猫であればガムシロップなどを口に含ませられれば理想
痙攣発作を起こしているときは意識を失っていることも多くあります。また意識があったとしてもからだの自由は効かない状態なので、周囲をみまわして猫が二次的な怪我をしないように予防してあげましょう。ただし、噛まれる危険性があるため発作中に口周りを触ることは避けることが大切です。
怪我を防止するための対応が終わったら、携帯のカメラで十分なので発作の様子を動画に記録することも大切です。痙攣発作には細かい種類がたくさんあり、その分類が治療方針を左右することもあります。
しかし痙攣発作の種類を飼い主が見分けることは難しく、また獣医師に発作の様子を言葉で説明するのも難しいものです。動画があれば獣医師も発作の分類をしやすく、スムーズに検査・治療方針を立てやすくなります。もし手元にカメラがなければ、発作の継続時間だけでも測定しておきましょう。
その際は体感時間に頼らずに、時計などで客観的に時間を測ることが大切です。発作を見守っている中では、どうしても1分1秒を長く感じてしまい、実際の継続時間よりも長く見積もってしまう傾向があるからです。
また特殊なケースとして低血糖による症状として痙攣発作が起きることがあります。ふだん何の病気も持っていなかった猫がいきなり低血糖におちいることはまずありませんが、糖尿病の治療としてインスリンの注射を打っている猫では注意が必要です。
インスリン治療中の猫が痙攣発作を起こした場合には、応急処置としてガムシロップを口の端などに垂らしてあげられれば理想的です。
痙攣発作の原因
痙攣発作の原因として代表的なものを紹介します。痙攣発作の原因はさまざまあり、見分けるためには血液検査などが必須です。自宅で見分けることは不可能ですが、痙攣発作が起きるかもしれないという予測をしておくには役立ちます。以下に紹介する中にある病気を持っている猫を飼っている方は、いざ痙攣発作が起きたときにもスムーズに対応できるように準備しておけるとよいですね。
てんかん発作
いわゆる「てんかん」の症状の1つとして痙攣発作が起きることがあります。「てんかん」には、脳炎や脳腫瘍などによる「症候性てんかん」と、検査では何も異常が検出されない原因不明の「特発性てんかん」の2種類があります。老猫で増えてくるのは前者であり、後者は比較的若い時から発生することが多いといわれています。
代謝異常
代謝異常とは、ひらたく言えば血液中に毒素がまわったり、血液の中では一定の濃度に保たれているべき成分が異常な濃度となったりしていることを指します。痙攣発作につながる代謝異常として代表的な病気は以下の通りです。
- 不全末期(尿毒症)
- 低血糖/高血糖
- 電解質の乱れ(熱中症など)
まとめ
痙攣発作は緊急性が高く、命に関わることも多い症状です。さらに自宅で発作を止めるためにできる効果的な応急処置はないに等しく、原因の見当をつけることも難しいために、なるべく早く動物病院へ連れて行くことが重要となります。今回の記事を参考に、万が一に痙攣発作が起きた時の対応を家族でイメージトレーニングしておけるとよいかもしれませんね。