排便や排尿は、健康を維持するために欠かせない営みです。したがって、排泄の状態というのは健康状態を測る重要な指標です。特に排尿の異常は、排便の異常と比べて緊急性が高い場合が多くあり、早期に適切な対応をとることがより大切となってきます。
この記事では老猫の排尿回数に異変が生じる原因と対応について解説しています。
目次
排尿の回数、ふつうは何回?
猫の排尿回数は、個体差もありますが1日に2〜3回が正常とされています。1日に1回もしなかったり、逆に4回以上したりするのは異常である可能性が高いといえるでしょう。
排尿の異常に気づくために重要なもうひとつの視点は「変化を捉えること」です。普段1日に2回の排尿しかしない猫が、3〜4回としているのは異常のサインかもしれません。普段から愛猫が1日に何回排尿しているか観察し、「愛猫の普段通りの回数」を把握するように努めることが大切です。
排尿回数が増える主な原因
「排尿回数が増える(頻尿)」とひとことで言いつつ、細かくみると2パターンがあります。それぞれのパターン別に詳しく解説していきます。
1回にする尿の量はいつも通りかむしろ多いパターン
ある程度まとまった量の尿を何回もするパターンです。尿の色は薄く、水に近いような状態のことが多いです。つくられる尿の量が増えた結果として頻尿となっていますので、濃い尿を作れなくなる病気、あるいは水を飲む量が増える病気が主な原因として考えられます。
代表例として、慢性腎臓病や糖尿病、甲状腺機能亢進症があがります。
1回にする尿の量がいつもより少ないパターン
ごく少量の尿を、何回もするパターンです。何度もトイレに行くけれど、ほんの2〜3滴しか出ないケースもこちらに含みます。尿の色はいつも通りか、むしろ濃いこともあります。
原因としては膀胱炎の場合が圧倒的に多いです。炎症によって膀胱内に尿を溜めづらくなる結果、少量ずつ何回も排尿せざるをえなくなります。膀胱炎の場合には血尿を伴うことも多くあります。
排尿回数が減る主な原因
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排尿回数が減っているとき、つくられる尿の量が減っているのかそうでないのかによって大別できます。それぞれのパターンにわけて、詳しく解説していきます。
どちらの場合でも、体の老廃物をうまく排泄できない状態であり命の危険もあります。24時間以上排尿がないのは明らかな異常であり、すぐに治療が必要です。なるべく早く動物病院へ向かうようにしましょう。
つくられる尿の量が減っているパターン
体内でつくられる尿の量が減れば、当然ですが排尿の回数も減ります。代表的な原因には、脱水があります。重度の脱水があれば、なるべく体内の水を体外に出すまいとして尿の量が減ります。他に重い腎不全によっても、尿量が減ることがあります。
急性でも慢性でも、腎臓に重度の機能低下が起きると尿をつくれなくなるためです。ユリの誤食によって急性腎不全が起きることは有名です。また慢性腎臓病が進行していくと、最終的には腎不全に至ります。そもそも膀胱に尿がたまらないので、尿意も示さないケースが多いです。
つくられる尿の量は正常なパターン
尿はいつも通りの量がつくられているにも関わらず、体外に排出できない状態です。圧倒的に多いのが雄猫の尿道閉塞です。尿石や、膀胱炎による炎症産物などが尿道に詰まってしまうことによって発症します。
膀胱に尿が大量にあるケースが多く、尿意を示すことが多いです。「頻繁にトイレに行くのに、肝心の尿自体は全く出ていない」という様子が観察された場合には要注意です。
老猫の排尿回数に異常があるときの対応
自宅で様子をみたりせずに、なるべく早く動物病院に相談することが大原則です。排尿の異常は命に関わることも少なくないことが理由です。特に「頻繁にトイレに行くのに、肝心の尿自体は全く出ていない」ときは、夜間だったとしても可能な限り早く動物病院を受診させるべきです。もし尿が全くつくれない、あるいは出せない状態だった場合には、発症から24時間以内に治療をしないと命に関わってしまう事態につながります。
そして残念ながら、排尿の異常に対して自宅で行える処置はほとんどありません。嘔吐や下痢をしていたなど脱水をおこしている心当たりがあれば、水分を多めに補給させることを心がけるくらいです。くれぐれも排尿状態の異常は自宅で様子見をせずに、動物病院の受診を最優先にするようにしましょう。
まとめ
多くの生物にとって、「排尿する」というのは生命を維持するために非常に大切な営みです。排尿の状態は健康状態の重要な指標となります。特に「尿が出ていない」という症状は、命に関わる深刻な症状といえます。排尿の異常については自宅で対応しようとせず、なるべく早く動物病院に連れて行くことが最も大切です。