人と同じように猫にも口内炎が発生します。
とくに年齢を重ねた猫に増えてくる傾向があります。口内炎が重度になってくると、痛みによってうまくごはんを食べられなくなったり、食欲そのものが落ちたりしてしまい、衰弱していきます。
たかだか口内炎と侮っていると命に関わってくることも少なくありませんので、きちんと動物病院を受診しましょう。この記事では口内炎の症状や、原因となりやすい病気、飼い主がとるべき対応について解説します。
目次
口内炎の症状
症状 | 猫の様子 |
---|---|
口腔内粘膜の発赤・潰瘍 | 口の奥の粘膜が真っ赤になっている |
流涎 | 異常な量のよだれがでる |
採食困難 | 食べこぼしや、左右のどちらかだけで噛むなどの痛みで食べづらい様子 |
口を気にする動作 | 頭を振る、しきりに前足でこするなど |
口の痛み | 触られるのを嫌がる、開けると痛がるなど |
元気や食欲の低下 | 体重減少など |
以上のような症状がみられる時には、口内炎であることが疑われます。
初期には、口の中の粘膜が少し赤いくらいの症状しかみられないことが多く、飼い主は見過ごしがちといえます。
重症化するにつれ、よだれや痛みが発生するようになります。とくに採食困難や、元気、食欲の低下によって体重が減少している場合には衰弱死につながるため注意が必要です。
そうでなくとも痛みがあれば、生活の質は確実に低下します。また、よだれによって口周りが不衛生となるでしょう。口の中を見せてくれる猫の場合には、普段から口内をよく観察して、なるべく早期発見できるようにしておくとよいでしょう。
すでに重症化している場合には、なるべく早く動物病院の受診をおすすめします。
老猫の口内炎の原因となりやすい病気
年齢を重ねた猫に口内炎が増えてくる原因は主に2つあります。
1つは加齢にともなってよだれの分泌量が減り、口腔内の衛生環境が悪化するためといわれています。もう1つが重要で、老猫に増えてくる病気が口内炎を引き起こすことが多いためです。
この章では、口内炎を引き起こしうる病気について紹介します。
慢性腎臓病
高齢猫の約3頭に1頭がかかるといわれており、とても一般的な病気です。
慢性腎臓病が進行してくると、口腔内や消化管の粘膜が傷害されるようになります。多飲多尿(水をたくさん飲み、尿をたくさんする)が代表的な症状であり、口内炎よりも先に発生することが一般的です。根治的な治療法はなく、進行を遅らせるための対症療法しかありません。
ウイルス感染症
猫ヘルペスウイルスや猫カリシウイルス感染によって口内炎が起きることがあります。一般的には後者のほうが口内炎を起こしやすいようです。いわゆる「猫風邪」の症状の1つと考えてよいでしょう。
涙や目やになどの眼の症状や、くしゃみ・鼻水など鼻炎様の症状を伴っている猫では特に注意が必要です。内服薬や注射薬を使った抗ウイルス療法が適応となります。
歯石の蓄積による歯周病
老猫は若い頃に比べて歯石が蓄積しやすくなってきます。その結果、いわゆる歯周病を起こして口内炎へとつながることも多くあります。
全身麻酔下での歯石除去術(スケーリング)や抜歯術の適応となります。
なお、高齢であるからといって無麻酔でのスケーリングを検討されている飼い主もいるかもしれませんが、原則おすすめできません。スケーラー(スケーリングに使う器具)によって口腔内を傷つけたり、歯を折ったりと合併症が生じる可能性が非常に高くなります。
その上、歯周ポケットや歯間など細かい部分の歯石を除去することはほぼ不可能で、治療効果もたいして得られないことがほとんどです。
さらには、猫に大変な恐怖と苦痛を与えます。よほどの大病をわずらっているのでない限り、全身麻酔下でのスケーリングを行ってあげましょう。
口腔部後部口内炎
猫に特有の病気で、詳しい原因がまだ明らかになっていません。
歯周病などの明らかな原因が確認できないにも関わらず、口の奥の方の粘膜を中心に重い口内炎を発生させます。
主に臼歯抜歯などの外科療法がとられますが、麻酔リスクが高いなどで外科の適応が難しい場合には消炎剤と抗生剤を主とした内科療法がとられます。
しかし難治性の病気であり、内科療法だけでのコントロールではいずれ限界を迎えることが多い病気です。
飼い主がとるべき対応
口内炎のような症状をみつけたときには、飼い主はどのような対応をとるべきなのでしょうか。優先度の高い順に紹介します。
動物病院を受診する
慢性腎臓病のように、口内炎の背景には全身性の病気が隠れていることもあります。また歯周病が重症化すれば顎の骨までもが溶けてしまったり、血液中に細菌が入り込んで敗血症を起こすなどのリスクもあります。
そこまで重症化していなくとも、慢性的な痛みは確実に猫の生活の質を落としています。たかが口内炎と侮らずに、まずは動物病院を受診して適切な診断・治療を受けるべきでしょう。
自宅でのケア
動物病院で指示された治療をうけさせる他に、普段自宅で一緒に過ごしている家族だからこそできるケアもありますので、ぜひ取り入れてみてください。
- よだれによる口周りの皮膚炎を防ぐため定期的に水で濡らしたガーゼなどで拭いてあげる
- 噛むのが辛そうであれば、柔らかいフードや流動食への切り替えを検討する
ウェットフードはドライフードよりコストがかかるほか、歯石がつきやすくなるなどデメリットもあります。実際に切り替える前には主治医にしっかりと相談しましょう。
まとめ
これまで繰り返し述べていることですが、たかが口内炎と考えて放置すると思わぬ結果を招くこともあります。
放置していて治る口内炎はめったにありません。
まずはしっかりと動物病院を受診して、口内炎の重症度はどのくらいか?背景に何か重い病気が隠れてないか?という点を的確に判断してもらうことが大切です。
そして、状況に合わせた的確な治療を受けさせるようにしましょう。