【獣医師監修】猫も脱水症状を起こすの?見分け方・症状・対処法について解説

猫 脱水症状

猫の体重の60~80%は水分です。水分はからだが正常に働くために重要な役割を果たしていますが、必要な水分が不足している状態を「脱水」といいます。脱水が起こる原因は水を飲む量が少ないこと以外にも、環境の変化や病気によるものまでさまざまです。

猫の脱水が起こる原因や症状、対処法について解説します。

猫の体内で水分はどのような役割があるの?

水分は6大栄養素のひとつです。猫のからだにとって水分はどのようなはたきがあるのでしょうか。

栄養素などを運ぶ

体内にある水分は、栄養や老廃物を血液中に溶かして運びます。老廃物は血液に溶けた状態で腎臓に運ばれ、濾過されて尿として排泄されます。

体温調節

温まりにくく冷めにくいという水の性質は、体内の急激な温度変化を防ぐ役割を持っています。
人はサラサラの汗をかき、汗が蒸発する際に発生する気化熱を利用して体温調節します。しかし、猫はからだの表面にある汗腺の種類が異なり汗をかけないため、汗で体温調節ができません。

体内環境維持


水分には血圧や血糖値などからだを維持するために必要な環境を整え、新陳代謝がスムーズに行われるように体液の性状を一定に保つ役割があります。

猫が脱水すると何がいけないの?

猫 脱水症状

からだにとって必要不可欠な水分のはたらきを紹介しましたが、猫が脱水を起こしてしまうとどのような症状が起こるのでしょうか。また、脱水しているのかどうかをどのように見分ければよいのか説明します。

必要な水分量

猫が1日に必要とする水分量は、体重1kgあたり約50mlです。体重が3kgの猫であれば1日に必要な水分量は150mlです。活動量によって必要な水分量は変化しますが、おおよその目安にしてください。どれくらい飲んでいるかわからないときには、決まった量の水を入れ、残った水の量をひくことで1日に飲んだ水の量がわかります。

脱水症とは

「脱水症」とは、体内の水分が足りない状態のことです。脱水が起こるとまず、口の渇き、食欲がなくなる、ぐったりする、皮膚の弾力性が失われる、尿量が減り色が濃くなるなどの症状が起こります。重度になるとふらつき、けいれん、意識を失うなどの状態に陥り命にかかわります。

脱水の見分け方

猫の脱水症状を見分けるには、皮膚の弾力を調べる「テントテスト」という方法が簡単です。猫の首の後ろから肩あたりの皮膚を優しくつまみ、持ちあげてみます。手を放してすぐに元の状態に戻れば脱水は起きていないと判断できます。
脱水症状を起こしているときには、持ち上げて皮膚がなかなか元に戻らないため脱水していると判断できます。

脱水が引き起こすリスク

脱水症状になるとからだの中の水分が減ることで、酸素や栄養素をからだの中に届けられなくなります。さらに血液が濃くなって固まりやすくなると血栓ができるリスクが高くなります。また、脱水の程度が重くなると元気がなくなるだけでなく、立てなくなり、最悪の場合意識を失い亡くなってしまうこともあります。
日常的に飲水量が少ない場合は尿路結石や膀胱炎のリスクも高くなります。

危険な脱水の状態

脱水の程度をテントテストで確認し、すぐに皮膚が元に戻る状態では体調に大きな変化はないでしょう。しかし、なかなか皮膚が元の状態に戻らない場合は危険な状態で、皮膚や四肢が冷たくなる、立てない、意識を失ってしまうこともあります。
少しでも脱水が疑われる場合は、水を飲める状態であればすぐに水分補給を行い、できるだけ早く動物病院を受診しましょう。

猫の脱水が起こる原因

では、猫が脱水を起こす原因にはどのようなことが考えられるでしょうか。確認しておきましょう。

水分摂取不足

飲水量の不足や食欲不振などにより水分不足が起こると、脱水症状を起こしてしまう可能性があります。猫はもともとあまり水を飲まない動物ですので、脱水症状に気づきにくいおそれがあります。

嘔吐・下痢

猫が嘔吐や下痢をしている場合、大量の水分や電解質がからだの外に出てしまうため、脱水症状を起こしてしまいます。下痢や嘔吐の原因として考えられるのは、細菌やウイルスの感染症、環境の変化などのストレスです。

腎不全

腎不全には急性腎不全と慢性腎不全があり、どちらでも脱水症状を起こしやすくなります。慢性腎不全の発症率は12歳以上の猫で24%、15歳前後では30%という報告があります。また、腎不全がわかるころには腎臓の機能の75%が失われているといわれています。
元気でも定期的な血液検査を受け、早期発見することが大切です。

糖尿病

猫が糖尿病になってしまうと、血糖値が上昇します。血糖値が上昇すると細胞内の水分が細胞の外に出てしまうので、脱水症状が起こります。特に太り気味の猫は糖尿病になりやすいといわれています。
体重管理をしっかり行いましょう。

脱水の予防方法・脱水が起きた場合の対処法

猫 脱水症状

猫が脱水症状を起こさないようにするための予防方法と、実際に猫が脱水症状を起こした場合の対処方法をご紹介します。

予防方法

猫は北アフリカの砂漠に住んでいたヤマネコの特徴が残っています。そこで、水が簡単に得られない乾燥した砂漠で生き残れるように、水分を体内にできるだけ残すために濃縮した尿を排泄するようになりました。それでもひどい脱水になると危険な状態に陥ります。
水を飲む量が少ない猫は、缶詰やパウチといったウエットフードを利用しましょう。ウエットフードは約80%が水分ですので、食べているだけで水分補給ができます。ウエットフードを好まない場合は、いつも食べているドライフードをお湯でふやかすとよいでしょう。

治療方法

軽度の脱水の場合はウエットフードやふやかしたドライフードを数日食べさせることで改善が可能な場合が多いですが、脱水の程度が重くフードを食べられない場合は点滴が必要になります。
動物病院では、脱水改善のために皮下点滴や静脈点滴を行います。点滴で水分補給を行うと同時に、脱水が起きている原因を血液検査などで確認し、原因に合わせた治療を行います。

まとめ

日常的に飲水量が少ないと膀胱炎や結石のリスクが上がります。それ以上に怖いのは、猫が15%の脱水を起こすと命にかかわる事態になってしまうことです。
猫はもともと水を飲まない動物ですが、脱水症状を起こさないためにも普段から水分摂取しやすい環境を整え、脱水のリスクや脱水の確認方法を知っておくことが重要です。

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WITHこの記事を監修した人

平松 育子

平松 育子

山口大学農学部獣医学科(現:山口大学共同獣医学部)卒業 山口県内の複数の動物病院で代診を務めたのち、2006年有限会社ふくふく動物病院を開業。2023年ふくふく動物病院を事業譲渡したのち、大手動物病院で院長を務める。 ペット系記事のウエブライターを10年経験し、2023年にペットの記事を執筆・監修する会社「アイビー・ペットライティング」を立ち上げ代表を務める。

ABOUTこの記事をかいた人

ふぁみまる編集部

今まで犬を始め、フェレット・ハムスター・カメ・インコなどさまざまなペットを飼育してきました。現在は、ジャックラッセルテリアと雑種の2匹を可愛がっています。趣味は愛犬たちとの旅行です。 このメディアでは、多くの飼い主の方々の不安や疑問・困っていることを一緒に解決していきたいと考えています。