ふと気づくと、床のあちらこちらに猫の毛束が……。よく見ると残っている毛もなんだか薄くなってきている気がする。最近、老猫の抜け毛が多いことが気になっている飼い主にむけて、その原因と対策について解説しています。
目次
猫の抜け毛の主な原因を解説!
猫の抜け毛が増えている際に、まず疑いたい原因をご紹介します。病気が隠れていることも多くあるので、まずはよくよく観察してみることをおすすめします。病気が隠れていそうな場合には、動物病院に相談するようにしましょう。
下に紹介する多くの例で、からだのどこかを「舐め続ける」ことで脱毛が引き起こされます。ただし、猫は家族の前ではからだを舐める姿を全く見せないことも少なくありません。観察ポイントも次の章でまとめていますので、参考にしてみてくださいね。
皮膚病
ノミなどの寄生虫症や、感染症、いわゆるアレルギーなど痒みを引き起こす皮膚病は珍しくありません。痒みを感じた猫は、その部位を執拗に舐めたり掻いたりといった行動をとるため、毛がちぎれて脱毛が発生します。また、珍しいケースではありますが、痒みを伴わない脱毛を引き起こす皮膚病もあります。
痛みや違和感
年齢を重ねた猫に増えるのが「痛み・違和感」です。老猫は慢性関節炎を発症して痛みを感じているケースが多くあります。人間が関節に痛みを感じたときに、手で擦ったり揉んだりしますが、猫はその代わりに「舐める」という行動をとります。
同じ部位を舐め続けることで、痒みの場合と同様に毛がちぎれて脱毛が発生します。
心理的なストレス
猫が心理的なストレスを感じたとき、からだのどこかの部位を舐めることで気を紛らわそうとすることがあります。そしてストレスが慢性化し、舐め行動が習慣化されてくる頃にはやはり舐めちぎりによる脱毛が発生してしまうのです。
換毛期
病的ではない脱毛の代表です。野生下の猫の換毛期は春と晩秋です。この時期に少し抜け毛が増えるのは、正常なサイクルといえるでしょう。なお、完全室内飼育の猫では換毛の時期がずれることも多くあります。飼い猫の場合は春と晩秋という時期は、目安程度に考えておくとよいでしょう。
猫の抜け毛が多い時にまず見るポイント!
- グルーミングの回数:異常に増えているようであれば痒みや痛みのサインかも。
- 脱毛斑(いわゆるハゲ)がないか:あれば明らかに病的。脱毛までいかなくとも、どこか一部位だけが明らかに他の部位より薄いのは病的。特に長毛種の猫は気づきにくいので注意。
- 皮疹(いわゆる湿疹)がないか:あれば明らかに病的。毛をかきわけてみないと気づきづらいので注意。
- 足をかばう様子や、運動をしたがらない様子がないか:ジャンプしなくなったなど。関節痛がある可能性あり。
- 頻尿や血尿がないか:膀胱炎があると腹部を異常に舐めて脱毛することがある。
- 元気食欲の低下などがないか:腫瘍に伴って脱毛することもある。
換毛期による脱毛の場合には、肌が見えるほど毛が抜けることはありませんし、過剰な舐め動作(痒みや痛み、違和感のサイン)を伴うこともありません。上記のポイントについてよく観察してみましょう。「おかしいな?」と少しでも感じるところがあれば、動物病院に相談することをおすすめします。
自宅で様子をみられる抜け毛って?
前章で解説したような兆候がない場合は、こまめにブラッシングをしつつ自宅で様子を見るのも1つです。換毛期やブラッシング不足で一時的に抜け毛が増えているだけというケースも少なくありません。一方で、前述の兆候を示している場合は病気の可能性が高いでしょう。
皮膚科に強い動物病院の選び方
猫の皮膚病は、研究が本格化したのが犬などより遅かったこともあり、まだまだ詳しくわかっていない領域が多くあります。獣医師の得意不得意の差が出やすい領域ともいえます。動物病院を受診する際には、皮膚科に力を入れている病院を選ぶのがおすすめです。
皮膚科に詳しい獣医師がいる病院かどうかを判断する1つの目安として、「皮膚科認定医」がいるかどうかが判断に役立つでしょう。一般社団法人日本獣医皮膚科学会が皮膚科の認定医制度を整えており、「認定医」のライセンスを持っているということは皮膚科診療に関して一定以上の水準を満たしたと学会から認められたことを示しています。皮膚科で受診する病院を探すときには、ぜひ参考にしてみてくださいね。
まとめ
老猫の脱毛には思わぬ病気が隠れていることもあります。特にずっと続く痒みや痛みは、ときに元気食欲の低下さえ引き起こして生活の質を大きく落とすこともあります。病的な脱毛が疑われた場合には様子を見たりはせず、なるべく早めに動物病院に相談することをおすすめします。病気の兆候を見逃さないためにも、普段から猫の様子をよく観察してあげられるとよいですね。