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朝目覚めたら愛犬の様子がおかしい
急に首を傾けてくるくる回転をして、まっすぐ歩けない、転んでしまう…
てんかん発作や、脳梗塞、認知症を疑う方もいるかと思います。
しかしこれは前庭疾患という、老犬が多く発症する神経の病気の可能性が高いでのす。

前庭疾患とは
まず前庭とは、体のバランスを正常に保つ働きをする器官の総称で、中枢性(小脳・延髄)と末梢性(中耳・内耳)に分類されます。
そして前庭疾患とは、様々な原因で平衡感覚を失ってしまう病気です。
動物のからだには、平衡感覚を司る三半規管という器官が両側の内耳にあります。
両側の三半規管が感知した頭の動きや位置が神経を通じて脳幹へ伝えられ、「平衡感覚」が生まれます。
片側の三半規管やその信号を受け取る脳幹がしっかりと機能しないことで、目の前がグルグルと回ってしまうような感覚に陥り、めまいやひどいふらつきが起こってしまうのです。
症状
首を傾ける
斜頸と言われる症状で、左右どちらかの耳を下に向けるような姿勢で、首を傾げたような姿勢になります。
ふらつく、転ぶ
平衡感覚が失われるので、まっすぐに歩けずふらつくようになります。転倒を繰り返しながら進もうとしたり、重度の場合は立ち上がるのも困難になり、倒れこんだ状態で寝がえりを打つように回り続ける、旋回運動といって、認知症の症状のひとつのように、一定方向にぐるぐると回り続ける症状も見られます。
目が小刻みに上下、左右に揺れる
眼振と言われる、眼球が一定の方向に小刻みに往復運動する症状です。目が回っているような状態に見えます。
眼球が上下、左右に回転し、上下の眼振は通常、中枢性(脳)前庭疾患の場合のみに見られる症状です。
原因
主に中枢性(脳)と末梢性(耳)に分けられます。
中枢性(脳)
脳梗塞や脳腫瘍、脳炎、脳への外傷や出血、細菌感染などの原因が挙げられます。
末梢性(耳)
内耳炎や中耳炎、耳の中の腫瘍、外傷などにより、三半規管に障害を及ぼす要因が発症を招くとされています。
治療
平衡感覚がうまく保てず、常に乗り物酔いのような状態になるため、嘔吐、ヨダレ、嘔吐、食欲不振、などの症状を伴うことも多々あります。
眼振による神経症状が出ている場合はMRI(CT)検査や脳脊髄液検査を行うこともあります。
嘔吐を繰り返した場合は脱水症状や食欲不振から全身症状の悪化につながり、点滴などの処置を行う場合もあります。
予防法
前庭疾患は耳の病気が原因で起こることもあるため、外耳炎の予防をし、内耳まで炎症が広がらないようにすることが、前庭疾患の予防になります。
突発性や、上記以外の原因による場合は突然、前触れもなく症状が出ることがほとんどで、予防法はとくにありません。ですので上記のような症状が見られた場合は早急に病院で診察を受けましょう。
また、この病気は昔は冬場の外飼いの子に多かったようですが、室内で飼育する家庭が増えたことによって季節を問わず起きているようです。ですが、寒さには注意が必要です。
対処法
症状が出たときは、冷静に対処しましょう。
愛犬のそのような状態を見て気が動転してしまうのは当然のことですが、それ以上にワンちゃんは不安な気持ちでいっぱいです。
気をそらせようと食べ物を与える方もいると思いますが、目が回って気分が悪くなるため、嘔吐の原因になってしまいます。
ふらつき、転倒からケガにつながる可能性も考えられます。
角があるもの、当たると危険なものは覆うなどする、フローリングは滑りにくいようにカーペットを敷くなどの対策をしてあげましょう。
倒れこんで立ち上がれない場合は、擦れ防止のために床との間にクッションを置くなどするのも良いでしょう。

最後に
前庭疾患は中枢性(脳)、末梢性(耳)それぞれの原因に応じた治療しますが、直接の原因を取り除く治療法はとくにありません。
ですが発症後は数日で改善がみられ数週間でよくなることが多いです。
前庭疾患が原因で死亡するということも、考えられません。
中には後遺症で首が傾いたままになる子や、再発の可能性もあるので注意が必要です。