猫は腎不全になることが多い、と聞いたことのある飼い主の方も多いのではないでしょうか。
この記事では、老猫になると発症のリスクが高くなる腎不全について症状や治療法を解説します。具体的な解説に入る前に、混乱しやすい用語の整理をします。
病名 | 解説 |
---|---|
腎不全 | 何らかの原因により腎臓の機能の大半がうしなわれてしまい、老廃物がからだの中に蓄積したり、体内の水分量をうまく調節できなくなったりするなどからだの内部環境を一定に保てなくなった状態。 |
急性腎不全 | 尿石による尿道閉塞や、毒物の誤食など何らかの原因によって腎機能が急激に低下して起きる腎不全。 |
慢性腎臓病 | 腎機能が徐々に失われていってしまう病気。末期には腎不全を発症する。 |
この記事では、「腎不全」を「急性腎不全」と「慢性腎臓病の末期におこる腎不全」の2つにわけて解説していきます。
目次
腎不全の症状を解説!
腎不全を発症した場合には、その原因がなんであるか、あるいは急性か慢性かに関わらず共通した症状がでます。まず起きてくるのは以下のような症状です。
・尿量の異常(初期には多尿、重度になるにつれ尿量が少なくなり最後には全く尿が出なくなる)
・脱水
腎不全の状態では、尿を正常につくることができなくなっています。
したがって、尿中に排泄されるべき体内の老廃物や毒素(尿毒性物質)が体内に蓄積することで以下のような症状を起こしてきます。この状態を「尿毒症」といいます。
・神経症状(けいれん、意識障害など)
・元気の低下、食欲の低下あるいは廃絶
・嘔吐や下痢などの消化器症状
腎不全の患者さんは定期的に「人工透析」というのを受けなければならないのは有名かと思います。
「人工透析」とは、尿毒症物質を人工的に取り除くことで、上にあげたような尿毒症防いでいるのです。
急性腎不全の原因や治療、予防法を解説!
この章では、腎不全のうちの「急性腎不全」について解説します。
考えられる主な原因
・尿道閉塞
・中毒(薬物、ユリなどの観葉植物の誤食など)
・感染症
・重度の脱水
・全身麻酔
尿道閉塞は、尿石症や腫瘍などによって尿を排泄できなくなってしまった状態です。
に雄猫は尿道が非常に狭いため閉塞が起きやすくなります。尿石症などを発症したことがある雄猫は注意しましょう。
また中毒物質の誤食によっても起きえます。重要なのは、飼い主の努力によってこれらの原因による急性腎不全のリスクを大幅に軽減できるということです。その方法は後述します。
ほかにも感染症や熱中症時などにおきる重度の脱水、全身麻酔などによっても急性腎不全となりえます。
急性腎不全の治療法
急性腎不全は非常に危険な状態であり、早めに治療を始められなければ命を落とす可能性が高いといわれています。
発症から24時間以内に治療を受けられるかどうかで、その後が大きく変わってくるでしょう。様子見でよくなることは絶対にありませんので、可能な限り早く動物病院を受診するようにしましょう。動物病院で行う治療は主に以下の2つです。
・静脈輸液
・急性腎不全となった原因の特定、治療
治療が成功すれば、腎機能が回復する可能性があります。
早めに治療を開始することができれば、正常レベルまで腎機能が回復することもありえます。治療が遅れれば遅れるほど救命率は下がりますし、命は助かったとしても腎臓に後遺症が残る可能性が高まります。様子見をしたりせず、すぐに動物病院を受診することが極めて大切です。
急性腎不全の予防法
急性腎不全の予防法は、日頃から排尿の状態を観察することが大切です。
頻尿や血尿などの膀胱炎のような症状がみられた場合には、急性腎不全に発展してしまう前に動物病院を受診しましょう。
尿の頻度だけでなく、量も大切です。尿が24時間以上でていない場合、極めて危険な状況です。可能な限り早く動物病院に連れて行かねばなりません。また肥満傾向の猫は、尿石症などの発生リスクが高まるため体重管理に努めることも予防法といえます。
また観葉植物の大半は猫にとって有毒です。「うちの猫は食べないから大丈夫」ではなく、そもそも観葉植物を室内に置かないことが大切です。
慢性腎臓病の末期の腎不全について解説
この章では慢性腎臓病の末期に起きる腎不全について解説します。
慢性腎臓病とは?
腎臓の機能が徐々に低下していってしまう病気です。
その原因そのものは特定できないことがほとんどです。10才以上の猫のおよそ3頭に1頭が発症し、末期には腎不全にいたります。慢性腎臓病が原因の腎不全は老猫の死因で腫瘍についで第二位となっています。
末期のときの治療法はあるの?
慢性腎臓病が進行して発生した腎不全は、急性腎不全とは違って残念ながら命を助けるための有効な治療がありません。
この状態では消化器症状が強くでている場合が多いので、胃酸の分泌を抑える薬や吐気止めの薬を使い、できるだけ苦しみを取り除いてあげることが治療の目的となります。
慢性腎臓病の予防はできるの?
予防法に関しては確立されておらず、治療法についても、現在の獣医学では、慢性腎臓病によって失われた腎機能を回復させることはできません。
さらには、慢性腎臓病の進行を完全に止めることもできず、治療の目的は進行を遅らせることにおかれます。ヒトでよく行われる「人工透析」は、猫ではごくごく一部の限られた病院でしか行われていません。したがって慢性腎臓病を早期に発見し、進行を抑えていくことが何より大切です。日々の尿量の観察や、定期的な健康診断の受診が早期発見に大切です。
まとめ
腎不全は早期発見、早期治療が何よりも大切です。
慢性腎臓病の予防は難しい一方、急性腎不全は予防できることも多くあります。
日頃から排尿の状態や元気食欲をよく観察して、異常があればすぐにでも動物病院を受診することをおすすめします。