老犬の咳の原因とは?飼い主ができる対応をわかりやすく解説

老犬の咳

犬が突然咳をし始めたら何か病気なのではないかと、とても心配になりますよね。

咳は緊急性の高い病気が原因であることも少なくありません。自宅で緊急性の目安をつけるためのポイントや動物病院で獣医師に伝えるべき情報のポイントを把握しておくと役に立つでしょう。

本記事では、そんな飼い主に向けて老犬の咳の原因や、原因になりやすい病気、取るべき対応をわかりやすく解説します。

老犬が咳をする原因

老犬 咳

老犬が咳をする原因を、大きく2つにわけて解説します。高齢のシニア犬になるほど、病気が原因である可能性は増えますが、まずは落ち着いて観察してみましょう。

生理的な咳

人が気管に異物が入りこみそうなときに咳をして防ぐのと同じように、犬もからだの防御反応として咳をします。また散歩の際に、急に冷たい空気を吸い込んだときやリードを引っ張って首が締まったときに、一時的に「カッカッ」という乾いた咳をすることもあります。

こうした場合の咳はいわゆる生理的な咳であるため、ほとんどの場合問題ありません。生理的な咳の場合には、すぐ収まる一過性の咳であることが特徴です。

病気が原因の咳

病気により咳が発生している場合には、注意が必要です。咳につながる病気は多くあるため、病気の種類については詳しくはのちほど解説します。

何らかの病気が咳の原因になっている場合は、「ゴホゴホ」と痰が絡んだような咳や湿った咳をすることが特徴です。また、咳が続く以外に食欲・元気がない、呼吸が早いなどの症状が併発することが多くあります。

老犬の咳の原因となりやすい病気

咳は年齢によって原因となる病気が変わってきます。

老犬に多く見られる主な病気には、以下のようなものが挙げられます。それぞれの病気には、発症しやすい「好発犬種」というものがあります。

咳も細かくみると、空咳のようないわゆる乾いた咳や、痰が絡むような湿った咳などにわかれますので、咳の種類の違いについても解説していきます。

慢性気管支炎

好発犬種 小型犬種(ヨークシャー・テリア、チワワ、パピヨン、ポメラニアン)
症状 夜間に悪化することも多い、抱くなどの刺激で咳が始まる
咳の特徴 痰が絡むような咳が続く

他に原因となる呼吸器の疾患が存在しないにも関わらず、慢性的(一般的には2ヶ月以上)に気管支に炎症があるときに診断される病気です。粘液の分泌が増えますので、痰が絡むような湿った咳が特徴です。

気管虚脱

好発犬種 上述のような小型犬
症状 興奮や運動時に悪化しやすい、ゼーゼーという呼吸音や呼吸困難を伴うこともある
咳の特徴 乾いた感じの咳

気管虚脱とは、本来は丸い形状の気管が呼吸の際に変形して扁平につぶれてしまう病気です。息を吸うとき、吐くとき、あるいはその両方で気管が変形します。加齢とともに症状が重くなっていく、進行性の病気です。

肺炎

好発犬種 さまざま
症状 咳のほか喀血や呼吸困難になることもある
咳の特徴 原因によって乾いた咳から湿った咳までさまざま

原因がなにであるかに関わらず、肺に炎症がある状態を肺炎と呼びます。人でも加齢に伴い問題となることが多い病気です。人と同じように犬も年齢を重ねると、細菌などの感染性あるいは食物などの誤嚥性肺炎が増えてきます。

ケンネルコフ

好発犬種 さまざま
症状 咳や鼻水、発熱
重症化すると咳が悪化し、呼吸が荒くなるなど
咳の特徴 乾いた咳から痰が絡んだような咳までさまざま

ケンネルコフとは、ウイルス感染や細菌感染により発症する伝染性気管気管支炎です。いわゆる風邪の症状が現れます。免疫力が弱まっているシニア犬はかかりやすいため、気温の変化などのストレスがかからないよう注意してあげましょう。

犬糸状虫症(フィラリア症)

好発犬種 さまざま
症状 咳が出る、元気や食欲がない、呼吸困難、血尿など
咳の特徴 乾いた咳、末期になると物が詰まったような「ゲーッ」という咳

フィラリア症(犬糸状虫症)は、犬糸状虫という寄生虫の感染症です。蚊を媒体として犬の体内に入り込みます。一度感染すると治療が難しい感染症であるため、予防が大切な感染症といわれています。

心臓病

ここでは、心臓病で最も多い「僧帽弁閉鎖不全症」について解説します。

好発犬種 チワワ、トイ・プードル、ポメラニアンなどの中高齢の小型犬
症状 疲れやすい、チアノーゼ(舌が紫がかっている)、呼吸困難、咳など
咳の特徴 些細な刺激で咳をする

僧帽弁閉鎖不全症は、心臓の逆流を防ぐ弁が完全に閉鎖しないため、左心室から左心房に血液の一部が逆流してしまう心臓病です。聴診で発見されることが多い病気ではありますが、初期は症状が現れにくいことでも知られています。日常的に咳が見られるようになったら、症状が進行している可能性があります。

心肥大

好発犬種 キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル、小型犬種
症状 慢性気管支炎に似ている
咳の特徴 乾いた咳、進行すると吐くような咳

心臓病を持っている犬は、症状の進行とともに心臓が大きくなっていくことが非常に多いです。心臓は気管のすぐ近くに位置していますので、大きくなった心臓が気管を圧迫することによって咳が出始めます。

心原性肺水腫

好発犬種 さまざま
症状 呼吸困難、喀血など
咳の特徴 湿った咳

心臓病の末期に起きる心不全、つまり心臓が血液のポンプとしての役割を果たせなくなった際に起きてくる病気です。
肺に体液や血液などが溜まった状態であり、陸上にいながらにして溺れてしまうような危険な状態です。なお心臓病以外に、犬糸状虫(フィラリア)の大量寄生によっても起きることがありますので予防をしていない犬は注意が必要です。

老犬が咳をしているときに飼い主がとるべき対応

老犬が咳をしているときの対応

ここまで咳の原因となりうる病気について解説しましたが、これらを自宅で診断し対処法を実施することは不可能です。そのため、飼い主がとるべき対応として、動物病院に一刻も早く連れていくべきかどうかを判断する「緊急性の判断」を行うことが大切です。

咳は日常的に発生しやすい症状ではあるものの、呼吸は生命維持に必要不可欠な機能です。もし呼吸不全があれば、命を守るために一刻も早く病院に連れていくべきです。「緊急性の判断」を行う際には、以下の2つのポイントをチェックしましょう。

チェックすべきポイント

  1. 舌などの粘膜の色が青や紫色(チアノーゼ)になっていないか

舌はキレイなピンク色をしているはずです。それが青や紫色に変わっている場合は、血液中の酸素が極端に足りなくなっているために「チアノーゼ」という現象が起きています。これは非常に緊急性の高い状態です。

  1. 安静時の呼吸数(正常の目安は40回/分以下)

安静時の呼吸数が多い場合には、一回の呼吸で十分な酸素を取りこめず、回数を増やしてなんとか対応している可能性があります。ただし、興奮時や運動時に呼吸数が増えるのはごく自然なことなので、あくまで安静時を観察しましょう。

動物病院に連れていく場合

「チアノーゼが確認できた」「安静時の呼吸数が多い気がする」といった場合には、一刻も早く病院に連れていきましょう。

しかし、ここで飼い主がパニックになってしまうと、診てもらえるまでに時間がかかってしまう可能性があります。まずは、落ち着いてかかりつけの動物病院に電話しましょう。夜中や休日などかかりつけの動物病院が休診の可能性があるため、事前に近くの夜間救急診療についても把握しておくことがおすすめです。

また移動時には、できる限り愛犬が楽な姿勢を取れるように基本的にはうつ伏せにして、顎の下にタオルやまくらを置いてあげましょう。ただし、胸の下に痛みがある場合には横向きが良い場合があるため、獣医さんからの指示をもらうと安心です。

様子を確認する場合

呼吸機能さえ安定しているようであれば、咳という症状だけですぐに命に関わる危険性は低いといえます。

ただしその後に呼吸不全に進行しないとも限りませんし、長く続く咳は体力を大きく奪います。自己判断にもとづく長期間の様子見は行わず、必ず数日以内には動物病院に連れていくべきでしょう。

動物病院で伝えるべきポイント

いざ動物病院を受診したとして、獣医師にどういったことを伝えるべきなのでしょうか。
緊急性が高いようであれば受診を優先するべきですが、ポイントを抑えておくと獣医師の理解も早まることでしょう。そのポイントについて以下に挙げます。

    ・元気、食欲の有無
    ・症状はいつ頃から出始めたか
    ・症状が出やすいタイミング
    ・安静時の呼吸の様子
    ・フィラリア予防を行っているか
    ・咳の詳細(乾いた咳、湿った咳、痰を伴うなど)

最後の咳の詳細については、飼い主が言葉で正確に説明するのはかなり難しいでしょう。
携帯電話のカメラで十分なので、咳の様子を動画で撮影して獣医師に見せるのがシンプルかつ間違いもありません。
獣医師は記載したようなポイントをふまえて問診を行い、聴診などの身体検査を行って、まずは対症療法で様子をみるか、X線検査や超音波検査などの検査を行っていくべきかの見当をつけるはずです。

まとめ

老犬が咳をしているときのまとめ

咳は緊急性の高い危険な状況のサインであることも多々あります。
愛犬の様子をよく観察しつつ、けっして自己判断で長期間の様子見をしたりせず、まずは動物病院に相談することが大切です。また心臓病を持っている犬の飼い主は、とくに普段から注意を欠かさないようにしましょう。

動物病院を受診する前には、咳の様子を動画で撮影しておけるとベストです。

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ABOUTこの記事をかいた人

ふぁみまる編集部

今まで犬を始め、フェレット・ハムスター・カメ・インコなどさまざまなペットを飼育してきました。現在は、ジャックラッセルテリアと雑種の2匹を可愛がっています。趣味は愛犬たちとの旅行です。 このメディアでは、多くの飼い主の方々の不安や疑問・困っていることを一緒に解決していきたいと考えています。