犬をお迎えしたらワクチンについて検討しなければなりませんね。愛犬に打つべきワクチンについて迷っている方もいらっしゃるかもしれません。今回は、ワクチンの中でも10種混合ワクチンに着目し、予防できる病気や費用、副作用などについて解説します。
目次
犬のワクチンの分類
犬のワクチンには、法律で義務化されている狂犬病ワクチン(義務)と、飼い主の任意で接種を行う任意ワクチン(非義務)に分類されます。今回ご紹介する10種混合ワクチンはこの任意ワクチンとなります。
<ワクチンの分類>
10種混合ワクチンの詳細を知ろう
今回は任意ワクチンの中でも、10種混合ワクチンに着目して見ていきましょう。
10種混合ワクチンにはコアワクチンとノンコアワクチンがすべて含まれ、10種類の病気を予防することができます。
<任意ワクチン一覧表>
10種混合ワクチンは、ノンコアワクチンのレプトスピラ症の感染リスクが高いかどうかで接種を決めることが多いワクチンです。次章では、コアワクチンとノンコアワクチンについて、さらに深ぼって見ていきましょう。
コアワクチンとは
コアワクチンとは、世界的に重要な感染症に対するもので、すべての犬が接種するべきワクチンです。その種類は、犬ジステンパー、犬伝染性肝炎(犬アデノウイルス1型)、犬アデノウイルス2型感染症、犬パルボウイルス感染症の4種となります。
コアワクチンは、ドッグランやペットサロン、ペットホテルなどの利用時に接種証明書の提示が求められるワクチンです。
コアワクチンの種類
コアワクチンの4種類を、それぞれの詳しく見ていきましょう。
犬ジステンパー
犬ジステンパーの原因は、犬ジステンパーウイルスです。感染した犬の唾液や飛沫、尿、ウイルスに汚染した食べ物を摂取することなどで感染します。発症すると初めは風邪のような症状ですが、進行するとウイルスが脳にまで侵入し、ウイルス性脳炎になります。
ウイルス性脳炎になった犬は、けいれん発作や麻痺を起こし、興奮状態になることもあります。1歳未満の犬では致死率の高い病気で、回復しても後遺症が残ってしまうこともあります。
犬伝染性肝炎
犬伝染性肝炎の原因は、犬アデノウイルス1型です。感染した犬の分泌物や、排泄物、咳やくしゃみ鼻水などに含まれるウイルスが鼻や口から侵入すると感染し、発症すると肝炎を起こすのが特徴です。
感染直後から嘔吐や腹痛、下痢などの症状がみられ、発症後12時間~24時間以内に死亡することもあります。1歳未満の犬では致死率の高い病気です。
犬アデノウイルス2型感染症
犬アデノウイルス2型感染症は、あとで説明する犬パラインフルエンザと同様に、犬の風邪である【ケンネル・コーフ】の原因となります。原因は犬アデノウイルス2型です。感染した犬の分泌物や排泄物、咳やくしゃみ、鼻水などから経鼻・経口感染します。
発症すると、乾いた咳を特徴とする風邪のような症状がみられます。他のウイルスや細菌などと混合感染すると、肺炎となり死亡することもある病気です。
犬パルボウイルス感染症
犬パルボウイルス感染症の原因は、犬パルボウイルスです。主に生後2週間~9週間の子犬に発症する病気です。感染した犬の糞や嘔吐物に含まれるウイルスが口から侵入することで感染します。発症すると、激しい嘔吐と下痢をおこし、脱水により衰弱し、重篤な場合は死亡することもあります。
日本ではワクチンの普及により現在では減りましたが、子犬の多い環境などでは今でも問題となることがあります。
ノンコアワクチンとは
ノンコアワクチンは、環境やライフスタイルによって必要かどうかを判断して接種するワクチンです。犬パラインフルエンザ、犬レプトスピラ症、犬コロナウイルスがあります。
また、その中でも、推奨・非推奨と分かれており、
推奨→犬パラインフルエンザ、犬レプトスピラ症
非推奨→犬コロナウイルス
となっています。
ノンコアワクチンの種類
前述したとおり、ノンコアワクチンには推奨と非推奨に分かれており、その中の推奨である犬レプトスピラ症には4種の血清型があり、それぞれに対応したワクチンがあるため、犬レプトスピラで4種類とカウントされます。
犬レプトスピラ症(推奨)
犬レプトスピラ症は、レプトスピラ属の細菌が原因で、様々な血清型が存在します。汚染された土や水に接触すると皮膚の傷や粘膜から感染します。また、感染した犬に咬まれる・汚染された食べ物や水を摂取することなどでも感染します。
発症すると、食欲不振や粘膜の充血や潰瘍をおこし、嘔吐や下痢、黄疸などをおこし、致死率の高い病気です。日本では関東以南の比較的暖かい地域で発生することの多い病気です。
犬パラインフルエンザ(推奨)
犬パラインフルエンザは、犬アデノウイルス2型と同様、犬の風邪である【ケンネル・コーフ】の原因となります。原因は犬パラインフルエンザウイルスです。
感染した犬の分泌物や、排泄物、咳やくしゃみ、鼻水などから経鼻・経口感染します。発症すると、乾いた咳を特徴とする風邪のような症状がみられます。他のウイルスや細菌などと混合感染すると、肺炎となり死亡することもある病気です。
犬コロナウイルス感染症(非推奨)
犬コロナウイルス感染症の原因は犬コロナウイルスです。感染犬の嘔吐物や糞便などを介して経口感染します。成犬では無症状のこともありますが、子犬では嘔吐や下痢などの消化器症状がでます。下痢などが長引くと脱水し、死亡することもあります。
しかし、そのワクチンの使用について科学的なエビデンスが十分ではないワクチンのため、ノンコアワクチン(非推奨)となっています。
ワクチンの費用
ここまで、10種混合ワクチンで予防できる病気について解説しました。それでは次に、ワクチンの大まかな費用について紹介します。
主なワクチンの費用比較
ワクチンの費用は、動物病院によって異なります。ここでは、混合ワクチンの中でも、比較的選択されることの多い5種混合ワクチン、7種混合ワクチン及び10種混合ワクチンの大まかな比較をお伝えします。
ワクチンは何種が良いか悩まれてる方や、実際の費用については、かかりつけの動物病院に問い合わせてみることをおすすめします。
5種混合ワクチン | 7種混合ワクチン | 10種混合ワクチン | |
大まかな費用 | 5,000円~7,000円 | 6,000円~9,000円 | 10,000円~13,000円 |
ワクチンの回数と副作用
もしも10種混合ワクチンを打つと決めた場合、どのようなタイミングで何回打てばよいのでしょうか。また、心配な副作用にはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは、ワクチンの回数や副作用についてお伝えします。
ワクチンを打つタイミング
ワクチンのタイミングと回数に関しては、ほとんどの動物病院が、前述の【犬と猫のワクチネーションガイドライン】にならっています。
一般的に、生後最初のワクチンは、生後6~8週齢です。その後16週以降までに2〜4週間隔での追加を行う【3回接種】が推奨されています。
子犬期に上記の接種を行った場合、成犬は1年に1回、または3年に1回の接種が一般的です。10種混合ワクチンの場合、動物病院の方針や、愛犬がドッグランなどの公共施設をよく利用するかどうかなどによって、1年に1回接種する場合と、3年に1回接種する場合があります。かかりつけの動物病院に相談するようにしましょう。
参考:https://wsava.org/wp-content/uploads/2020/01/WSAVA-vaccination-guidelines-2015-Japanese.pdf
ワクチンの副作用
最後に、心配されるワクチンの副作用に関して解説します。
ワクチンの副作用として最も深刻なのはアナフィラキシー反応です。可能性はとても低いですが、最悪の場合は死亡することもあります。この反応は、接種後すぐに現れ、概ね接種後1時間以内に現れます。アナフィラキシー反応をおこした場合でも、適切な処置を行えば救命できますので、ワクチン接種後はしっかり愛犬の様子を観察してあげてください。
また、接種後数日間は、顔の腫れ、むくみ、接種部位の腫れや痛み、全身の発疹やかゆみ、発熱、活動性の低下、嘔吐、下痢、食欲低下というような反応が出ることがあります。これらはワクチンに対するアレルギー反応であり、時間の経過と共に自然に治ることが一般的です。
万一ワクチンで副作用が出てしまった場合、その後の接種に関しては獣医師とよく相談しましょう。
まとめ
ワクチンの分類や、10種混合ワクチンについて参考になりましたでしょうか。
ワクチンの接種は義務付けられているものの、任意ワクチンはコアワクチンとノンコアワクチンに分かれ、予防できる範囲や費用感も変わってきます。かかりつけの動物病院に相談し、愛犬にとって最適なワクチン接種を行いましょう。