今は元気でいてくれる愛犬にもやがて必要となるかもしれない介護。どの介護シーンでも共通して大切なのは犬だけでなく家族全員の身体的、精神的健康を大切にしながら介護と付き合っていくという視点を保つこと。
今回は、老犬の介護について、シーン別に解説します。
目次
シーン1|認知症の犬の介護
近年、飼い犬の平均寿命が伸びたことによって、犬にも人同様に認知症ともいえる症状があることがわかってきました。残念ながら犬の認知症に対する有効な治療は確立されておらず、家族がうまく付き合っていくことが必要になります。以下のような対応が考えられます。
認知症の犬はバック(後ずさり)ができない!
後ずさりができなくなった犬は四角形のサークルの4隅や、家具の隙間にはまりこんでしまっても抜け出すことができず、その場から動けなくなってしまいます。円形のサークルや、家具の隙間を埋めるグッズが市販されているので、それらを活用して犬がはまりこんでしまう場所をそもそも無くしてしまう工夫が必要です。
昼夜逆転して夜鳴きすることも
夜鳴きへの対処は、何かを要求して吠えているのか、それとも認知症の症状の1つとして本当に意味なく吠えているのかによって異なります。動物病院での様子しか知らない獣医師がそれを見極めることは難しく、飼い主自身がよくよく観察して見極めることが大切です。
前者であるなら鳴かなくてすむような環境を整えましょう。たとえば食事が欲しくて夜中に鳴くなら、自動給餌器を設置することで夜鳴きを軽減できるかもしれません。前述のように家具の隙間などにはまり込んでしまい助けを求めて鳴くなら、予め隙間を塞いでおくなど、とるべき対応はさまざまです。
後者であれば、飼い主だけで対応することは残念ながら難しいでしょう。動物病院に相談して睡眠薬や鎮静薬を処方してもらうなど、獣医師に協力を仰ぐことが必要です。
家族の生活も大切に、家族だけで抱え込まない!
終わりの見えない介護生活は、身体的精神的に大きな負担となることも多くあります。そんなときに助けを求められる人や場所を探しておくのも大切なことです。特にやまない夜鳴きは、家族の生活に非常に大きな負担をかけます。どうしてもという場合には、ペットシッターや老犬介護施設を利用することを家族と相談してみるべきかもしれません。
シーン2|足腰の弱った犬の介護
犬も年齢とともに筋力の低下や、関節の痛みなどによってうまく歩けなくなってしまうことが多くあります。そんなときでも、外に出られない状況は散歩好きな犬であればあるほどストレスを感じてしまうでしょう。また動かないでいればいるほどさらに足腰は弱っていき、やがては寝たきりとなってしまいます。適度に運動させることは健康維持に重要です。そのための工夫を以下に紹介します。
滑り止め用の靴を履かせる
まだある程度は筋力も残っており、自力で歩けている犬に適した方法です。フローリングなどの滑りやすい素材の床の上でも歩きやすくしてあげられたり、足があまりあがらないことによってアスファルトなどで擦り傷をつくってしまうことを防いだりすることができます。
歩行補助用のハーネスを活用する
四肢とも動かすことができ、体重も飼い主が支えて散歩できる程度の犬に適した方法です。飼い主が犬を吊り下げるようにして、犬の足腰にかかる負担を和らげることができます。様々なサイズが市販されているので、手軽に始められるのも魅力の1つです。
犬用の車椅子を活用する
前肢あるいは後肢を全く動かせなくなってしまった犬や、体重が重すぎて前述の歩行用ハーネスを使いづらい犬に適した方法です。完成品が市販されている他、オーダーメイドでの注文を受け付けているメーカーも存在します。
シーン3|寝たきりの犬の介護
筋力の低下や、何らかの病気によって寝たきりとなってしまう犬もいます。寝たきりの犬の介護で最も重要なのが床ずれの防止です。床ずれとは、からだのある部位に体重が長時間にわたって集中してかかってしまうことで血流の流れが滞り、その部位が壊死してしまう現象のことです。
寝たきりで寝返りが打てない犬に起こりやすく、生活の質を著しく落としてしまいます。肩や腰骨のあたりなどからだの出っ張っている部分には特に注意が必要です。
床ずれ防止用のマットレスを活用する
体圧を分散させ、床ずれを起こしづらくするマットレスが多数市販されています。サイズもさまざまですので、愛犬の体格に合わせて選んであげましょう。防水シーツをかけて使うと、汚れてしまった場合にも洗濯がしやすく便利です。
定期的に寝返りを打たせてあげる
床ずれ防止マットレスを敷いたとしても、床ずれの発生を完全に防げるわけではありません。人の手で定期的に寝返りを打たせてあげることがどうしても必要になってきます。3時間毎に寝返りを打たせるのが理想的でしょう。
オムツを履かせてあげる
寝たきりの犬は当然、トイレに自力で行くことができません。からだが排泄物で汚れてしまうと、皮膚炎が発生しやすくなります。オムツを履かせて、からだが排泄物で汚れてしまうのを防いであげることが重要です。
もちろんオムツの下の部分はよごれてしまうので、毛を短く刈り込んだり、定期的に拭いてあげたりして清潔に保ってあげるようにしましょう。からだを拭いてあげる際には、専用品の他、ヒトの赤ちゃん用のノンアルコールのおしり拭きでも代用できます。
どんな介護シーンでも大切なこと
老犬の介護では犬のことを考えるのと同時に、他の家族の身体的、精神的健康を保つこともとても大切です。当記事のような媒体からさまざまな情報を集めたり、似たような境遇の人たちで集まったりして決して家族だけで抱え込まないようにしましょう。それができないと、愛犬との最後の思い出が苦痛に満ちたものになってしまいます。
愛犬と最後まで慈しみにあふれた時間を過ごせるように常に心がけながら、時には獣医師やペットシッター、老犬介護施設など職業人の助けも得ながら介護と向き合っていくことが大切です