猫の膀胱炎に代表される膀胱〜尿道の病気は「猫の下部尿路疾患」という総称がつけられているほど多く発生する病気です。さらに老猫になってくると若齢の頃よりも発生しやすくなってくるといわれています。
今回は、愛猫の膀胱炎に悩んでいる飼い主だけでなく、これからのために知識をつけておきたい飼い主にも向けて、猫の膀胱炎について解説していきます。
目次
膀胱炎のタイプ別に解説!
膀胱炎は、原因によって大きく3つにわかれています。タイプによって治療法が異なってくるので、動物病院でしっかりと診断してもらいましょう。
特発性膀胱炎
最も多いタイプが、突発性膀胱炎です。「特発性」とは「何が原因で起きているかわからない」という意味で、尿検査など諸々の検査で原因が診断できないときにつけられる病名です。
特発性膀胱炎が発生する詳しいメカニズムは明らかになっていませんが、体質、体型のほか、ストレスや飲水量、トイレの環境など、複数の要因が関わって発症すると考えられています。
尿路結石による膀胱炎
いわゆる尿石が膀胱内に形成されると、その石ないし結晶が膀胱粘膜を刺激して炎症を起こすことがあります。尿石の中にも種類がいくつかあり、食事療法や外科手術による摘出など、種類によって対応が異なってきます。
自宅で自己判断して尿石用の食事を与え始めたりはせず、動物病院でしっかり尿石の種類まで診断を受けるようにしましょう。
細菌性膀胱炎
膀胱粘膜に細菌が感染している状況です。本来、猫の尿は非常に濃く刺激性があるため細菌が増えづらい特性をもっています。そのため若い猫ではほとんど発生しませんが、老猫になると増えてくる傾向にあります。
これは、慢性腎不全などを発症して尿が薄くなってしまい、細菌が増えやすい尿となっていることが多いため。細菌性膀胱炎と診断されたら、そもそもなぜ細菌が増えているのか原因を探っていくことが大切です。
老猫の膀胱炎?症状って?
膀胱炎とひとことで言っても、表れてくる症状は様々です。ここでは、代表的な症状を紹介しますので、愛猫の異常を見逃さないようにしましょう。中には緊急性が高い症状もあるため、注意が必要です。
少量頻回尿
もっとも代表的な症状です。膀胱に炎症があると、おしっこが少したまっただけで尿意を感じるようになります。そのため頻尿となるのですが、ポイントは「少量ずつ」の頻尿である点です。膀胱炎だけでは、1日の尿の総量は増えません。
「多量の」尿を何回もする場合には、単純に尿量が増えたがための頻尿と考えられ、腎不全など尿量を増やす別の病気である可能性が高いので注意しましょう。
血尿
血尿にも程度があり、誰がみても血尿だとわかる真っ赤な尿から、いつもよりも少―し黄色が濃いかなという程度まで様々です。後者の場合は、たとえばペットシーツのある一点だけ鮮血のシミがついていることがあります。尿全部が真っ赤でないからといって、油断しないようにしましょう。
おしっこが出ない
「尿閉」とも呼ばれ、膀胱におしっこはたまっているのに排尿できていない状態です。非常に危険で24時間以内に治療しなければ、腎障害が始まります。そして48時間以内に適切な治療がなされなければ、死にいたる症状です。
尿道に尿石や炎症産物、血液の塊などが詰まって起きます。あるいは尿道自体が炎症で腫れ上がって、道を塞いでしまうことでも起こります。
特に雄猫は雌猫と比べて尿道が狭く折れ曲がっているため多く発生します。尿閉の雄猫は陰茎を舐める仕草を頻繁にするかもしれません。可能な限り直ぐに、動物病院で受診しましょう。
自宅でできる対策について紹介!
膀胱炎は動物病院で指示される投薬や食事などの治療と同じくらい、自宅での対応が大切となってくる病気です。膀胱炎は再発率が高く、治療が難航するケースもあります。一方で、自宅での対応次第で治療期間の短縮、再発リスクの低下が望める病気でもあります。
ぜひ主治医と協力して、自宅での対応を整えていきましょう。具体的にどのような対策をとればいいのか紹介していきます。
トイレ環境の整備
猫はトイレの環境が気に入らないと、ギリギリまで排尿を我慢してしまう動物です。尿が長時間膀胱にとどまっている状況は、膀胱炎の発生率を高めるほか、治療や予防の上でも望ましくありません。
猫に快適なトイレにするためのポイントを以下に紹介します。トイレの好みはその猫その猫でさまざまなので、ぜひ以下の点を参考に愛猫にオーダーメイドのトイレ環境を整備してあげてくださいね。
- トイレの大きさは、体長の1.5倍がちょうどいい。大きすぎも小さすぎもNG。
- トイレの個数は、飼育頭数+1個が理想的。
- 常に清潔に!こまめに掃除を!
- 蓋付きトイレは匂いがこもるため、嫌う猫が多い。人でいう工事現場にある簡易トイレのイメージ。
- トイレ砂の素材は、好みも様々なので複数そろえて実験してみる。
飲水量を増やす
老齢になると関節炎を発症する猫が非常に多く、水飲み場まで動くのも面倒になってくる猫が多いです。そのため脱水によっておしっこが濃くなりやすく、これが尿石による膀胱炎を起こしやすくしています。
寝床の近くや、お気に入りの場所の近くなどいろいろなところに水飲み場を設置すると、飲水量の向上に役立つかもしれません。また金属の匂いを嫌う猫は多いため、水のお皿を陶器に変えてみると飲んでくれる猫もいます。
その他、市販されている流水がでる水飲み皿など、それぞれの猫の好みに合わせて自宅で工夫をしてみてください。ドライフードを与えているのであればウェットフードに切り替えるのも手ですが、歯石がつきやすくなるため注意が必要です。
食事内容を見直す
いわゆるミネラルが多いものを与えていると、尿石の発生率があがってしまいます。おやつに煮干しなどは控えたほうがよいでしょう。ミネラルウォーターを与えているご家庭では硬水は控えて、軟水を与えるようにしましょう。日本の水道水は軟水なので問題ありません。
まとめ
膀胱炎は猫に多く発生する病気であり、かつ再発率の高い病気です。治療と予防で行うべきことが重なっている部分も多く、自宅でとれる対策が重要となってきます。動物病院と家族が協力して治療、再発予防のために工夫していくことが大切です。