愛犬が年齢を重ねるにつれて、
「夜になると鳴くようになった」
「目的もなく歩き回っている」
「今までできていたトイレを失敗するようになった」
など、これまでとは違う行動がみられることがあります。
こうした変化の背景には、加齢に伴う犬の認知機能不全症候群(認知症)が関係している可能性があります。
犬の認知症では、徘徊や夜鳴きだけでなく、睡眠リズムの変化、家族への反応の変化、排泄の失敗、不安の増加など、さまざまな症状がみられます。
ただし、これらの症状があるからといって、必ずしも認知症とは限りません。
痛みや視力・聴力の低下、脳や内臓の病気などによって似た症状が現れることもあるため、気になる変化があれば動物病院へ相談することが大切です。
この記事では、老犬の認知症でみられやすい7つの症状と、飼い主さんができる対応についてわかりやすく解説します。
目次
犬の認知症(認知機能不全症候群)とは?
犬の認知症は、正式には「犬認知機能不全症候群(CCDS:Canine Cognitive Dysfunction Syndrome)」などと呼ばれます。
年齢を重ねることで脳の機能が低下し、記憶や学習、空間の認識、睡眠、行動などに変化が現れる状態です。
人の認知症とまったく同じ病気というわけではありませんが、高齢犬にみられる代表的な加齢性疾患のひとつです。
犬の認知機能不全症候群では、症状を整理する際に「DISHAA」と呼ばれる考え方が用いられます。
・Disorientation:見当識の変化
・Interaction:社会的な交流の変化
・Sleep-wake cycle:睡眠・覚醒リズムの変化
・House soiling / learning / memory:排泄、学習、記憶の変化
・Activity:活動性の変化
・Anxiety:不安や恐怖の増加
つまり「徘徊するようになった」という一つの症状だけでなく、生活全体にどのような変化が起きているかを見ることが大切です。
老犬の認知症でみられやすい7つの症状
ここからは、犬の認知症でみられる代表的な症状を紹介します。
一つだけではなく、複数の変化が同時に現れる場合もあります。
症状その1.目的もなく歩き回る・徘徊する
老犬の認知症でよく知られている症状のひとつが「徘徊」です。
部屋の中を何度も歩き回ったり、同じ場所をぐるぐる回ったりすることがあります。
飼い主さんから見ると「何の目的もなく歩いている」ように見えるかもしれません。
しかし、犬自身は、
・自分の居場所がわからなくなっている
・落ち着けず、不安になっている
・飼い主さんや寝床を探している
・食事をしたことがわからなくなっている
など、何らかの理由から歩き続けている可能性があります。
そのため、無理に歩くのをやめさせようとするのではなく、まずは愛犬が何を求めているのか観察してみましょう。
徘徊そのものを完全に止めることが難しい場合には、家具の角にクッションを付けたり、転倒しにくい床材にしたりするなど、安全に歩ける環境を整えることも重要です。
▼詳しくはこちら
老犬の徘徊について原因と対応を解説!
症状その2.昼夜逆転して夜鳴きをする

昼間はほとんど寝ているのに、夜になると目を覚まして歩き回ったり、鳴き続けたりする「昼夜逆転」も、老犬の認知症でみられる症状のひとつです。
特に夜鳴きが続くと、愛犬だけでなく一緒に暮らす家族の睡眠にも大きく影響します。
場合によっては、鳴き声が原因となって近隣とのトラブルにつながることもあります。
対策としては、
・日中に適度な運動をする
・日中に日光を浴びる
・生活リズムをできるだけ一定にする
・安心して眠れる寝床をつくる
・夜間に不安になる原因がないか確認する
などが考えられます。
ただし、夜鳴きには認知機能の低下以外にも、痛みや不安、排泄したい、喉が渇いているなど、さまざまな原因があります。
夜鳴きが続いて家族の生活にも影響が出ている場合は、無理に家庭だけで解決しようとせず、獣医師へ相談しましょう。
症状や体調に応じて、生活環境の改善や食事、治療などを検討できる場合があります。
▼犬の夜鳴きについて詳しくはこちら
老犬の夜鳴き(夜泣き)!考えられる原因とは?対処方法もご紹介
症状その3.トイレを失敗するようになる

「今まできちんとトイレでできていたのに、突然違う場所で排泄するようになった」という変化も、認知機能低下のサインのひとつです。
認知機能が低下すると、
・トイレの場所がわからなくなる
・トイレまでの行き方がわからなくなる
・排泄のルールを忘れてしまう
などの変化が起こる場合があります。
ただし、老犬の排泄の失敗は認知症だけが原因とは限りません。
足腰の衰えによってトイレまで間に合わなくなっていたり、泌尿器系の病気などが関係していたりする可能性もあります。
突然失敗するようになった場合や、排尿回数・尿量などにも変化がある場合は動物病院へ相談しましょう。
家庭では、
・トイレの数を増やす
・寝床の近くにもトイレを置く
・ペットシーツを広めに敷く
・必要に応じて犬用オムツを使用する
など、愛犬を叱らずに済む環境をつくってあげることが大切です。
症状その4.ぼーっとする・狭い場所から出られなくなる
認知機能が低下すると、自分が今いる場所を正しく認識する「見当識」に変化が現れることがあります。
例えば、
・壁の前で立ち止まってぼーっとしている
・家具と壁の隙間に入って出られなくなる
・ドアの開く方向がわからない
・いつも通っている場所で迷う
・部屋の中で突然立ち止まる
などです。
「年を取って動きが鈍くなっただけ」と思われやすい症状ですが、以前とは明らかに違う行動が増えてきた場合には注意しましょう。
また、視力や聴力の低下でも似た行動がみられるため、認知症だけで判断しないことが重要です。
症状その5.家族への反応が変わる
以前は飼い主さんが帰宅すると喜んで迎えてくれていた犬が、反応しなくなることがあります。
反対に、それまで一人で過ごすことができていた犬が、急に飼い主さんのそばを離れたがらなくなるケースもあります。
例えば、
・名前を呼んでも反応しにくくなる
・飼い主さんを見ても反応しない
・スキンシップを嫌がるようになる
・家族との交流が減る
・反対に以前より甘えるようになる
などの変化です。
ただし、耳が聞こえにくくなっている、目が見えづらくなっている、体に痛みがあるといった身体的な原因でも反応が変わることがあります。
愛犬の性格が急に変わったように感じた場合も、一度獣医師へ相談してみましょう。
症状その6.同じ行動を何度も繰り返す
認知症の犬では、活動性や行動パターンが変化することがあります。
例えば、
・同じ場所をぐるぐる回る
・部屋を行ったり来たりする
・同じところを何度も確認する
・目的のわかりにくい行動を繰り返す
などです。
一方で、以前より遊ばなくなったり、散歩への興味が薄れたりするなど、活動量が低下する場合もあります。
活動量の減少は関節痛など身体的な問題でも起こるため、「高齢だから仕方がない」と判断せず、ほかの変化と合わせて観察しましょう。
症状その7.不安そうになる・落ち着かなくなる
認知機能が低下すると、それまで平気だった場面で不安や恐怖を感じやすくなることがあります。
例えば、
・飼い主さんが離れると不安になる
・突然落ち着かなくなる
・今まで怖がらなかった音を怖がる
・暗くなると不安そうにする
・飼い主さんの後をついて回る
などです。
自分の周囲の状況を理解しづらくなることで、愛犬自身も不安を感じている可能性があります。
叱ったり強制的に行動を止めたりするのではなく、安心して過ごせる場所を用意してあげましょう。
「認知症かな?」と思ったら動物病院へ相談しよう
ここまで紹介した症状がみられても、すぐに「認知症だ」と判断することはできません。
高齢犬では、
・視力や聴力の低下
・関節や腰などの痛み
・内臓疾患
・ホルモンに関係する病気
・神経や脳に関係する病気
などによっても、認知症と似た行動変化がみられることがあります。
そのため、老犬の行動が以前と明らかに変わってきた場合には、まず動物病院で相談することが重要です。
普段の生活で気になる行動がある場合は、スマートフォンで動画を撮影しておくのもおすすめです。
診察室では再現されない夜鳴きや徘徊などの行動も、動画があれば獣医師へ伝えやすくなります。
老犬の認知症と上手につきあうためにできること
認知機能の低下が進んでも、生活環境を工夫することで愛犬が過ごしやすくなる場合があります。
生活リズムを整える
食事・散歩・睡眠などの時間をできるだけ一定にすると、愛犬が生活の流れを把握しやすくなります。
昼夜逆転を防ぐためにも、体調に無理のない範囲で日中に活動する時間をつくりましょう。
安全に歩ける環境をつくる
徘徊や視力低下がある場合は、家具の角や階段などが事故につながることがあります。
・家具の角を保護する
・滑りにくいマットを敷く
・階段へ入れないようにする
・危険な隙間をふさぐ
などの対策をしておきましょう。
強く叱らない
トイレを失敗したり、夜中に鳴いたりしても、愛犬自身がわざとしているわけではありません。
叱ることで不安が強くなってしまう可能性があります。
「できなくなったことを直す」という考え方だけではなく、できなくなっても困らない環境に変えていくことも大切です。
飼い主さんだけで抱え込まない
老犬の介護では、夜鳴きや排泄の介助などによって飼い主さんの負担が大きくなることがあります。
愛犬を大切に思っているからこそ、無理をしすぎないことも重要です。
家族で役割を分担したり、動物病院へ相談したりしながら、愛犬と家族の双方ができるだけ穏やかに生活できる方法を探していきましょう。
老犬の認知症に関するよくある質問
Q.犬は何歳くらいから認知症になりますか?
犬の認知機能低下は主に高齢になってからみられますが、「何歳になったら必ず発症する」という明確な年齢が決まっているわけではありません。
犬種や体格、健康状態などによって老化の進み方も異なります。
年齢そのものよりも、これまでとは違う行動が増えていないかを観察することが大切です。
Q.老犬がぐるぐる歩き回るのは認知症ですか?
認知症によって同じ場所を歩き続けることはありますが、それだけで認知症とは判断できません。
視力低下、痛み、神経疾患などでも似た行動がみられることがあります。
頻繁に繰り返すようになった場合は、動画を撮影して動物病院で相談するとよいでしょう。
Q.老犬の夜鳴きは認知症が原因ですか?
認知症に伴う睡眠リズムの変化によって夜鳴きする場合があります。
一方で、痛み・不安・空腹・排泄・体調不良などが原因となることもあります。
夜鳴きが急に始まった場合や長期間続く場合には、原因を確認するためにも獣医師へ相談しましょう。
Q.認知症の犬を叱っても大丈夫ですか?
認知機能が低下している犬は、なぜ叱られているのか理解できない可能性があります。
不安やストレスを強めないためにも、失敗を叱るより、安全で生活しやすい環境を整えることを優先しましょう。
まとめ|小さな行動の変化に気づいてあげよう
犬の認知機能不全症候群では、
・徘徊する
・昼夜逆転や夜鳴きが増える
・排泄を失敗する
・ぼーっとする、迷う
・家族への反応が変わる
・同じ行動を繰り返す
・不安が強くなる
など、さまざまな変化がみられます。
長い時間を一緒に過ごしてきたからこそ、愛犬の小さな変化に最も気づきやすいのは、毎日そばにいる飼い主さんです。
「年だから仕方ない」と思っていた変化の中に、認知機能低下や別の病気のサインが隠れていることもあります。
気になる行動が増えてきたら、まずは普段の様子を記録し、かかりつけの獣医師へ相談してみましょう。
認知機能が低下したとしても、愛犬が安心して暮らせる環境を整え、必要に応じて専門家の力を借りることで、穏やかな時間を過ごせる可能性があります。
年齢を重ねた愛犬との一日一日を大切にしながら、その子に合ったペースで寄り添っていきましょう。
Last Updated on 2026/08/28 at 11:08 by ふぁみまる編集部

今まで犬を始め、フェレット・ハムスター・カメ・インコなどさまざまなペットを飼育してきました。現在は、ジャックラッセルテリアと雑種の2匹を可愛がっています。趣味は愛犬たちとの旅行です。
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